■家の再興に固執し、暴挙に出た悲しき男
OVA『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』に登場するギニアス・サハリンは、ジオン公国軍の技術士官であり、地球連邦軍本部「ジャブロー」攻略用のモビルアーマー開発計画「アプサラス計画」を任されていた。
ギニアスはジオンの名家の生まれでありながら、幼い頃に爆発事故に巻き込まれ、定期的に薬の投与が必要な体になる。その後、名門のサハリン家は没落し、両親もいなくなって妹のアイナと2人きりになった。
こうしてサハリン家の当主になったギニアスは、没落した家を再興しようと奮闘。自身が発案した「アプサラス計画」の成功に取り憑かれてしまう。
その後のギニアスの行動は常軌を逸していた。友軍の将であり、旧知の仲であるユーリ・ケラーネがアプサラス計画の中止を企んでいることを知ると、部下ともども謀殺。さらに「アプサラスIII」が完成するとアプサラスを独占しようと、これまで協力してくれた開発者たちまで全員毒殺するというとんでもない暴挙に出た。
そして兄の凶行を知った妹のアイナは、ギニアスの暴走の理由を「家の再興」だけではなく、「親からの愛情の欠如」と見定め、唯一の家族である兄と決別。自らの手で兄を止めるため、過酷な戦いへと身を投じたのである。
■生命を弄んだ、コズミック・イラの闇の体現者
テレビアニメ『機動戦士ガンダムSEED』に登場したユーレン・ヒビキは、遺伝子研究のスペシャリストであり、主人公キラ・ヤマトの本当の父親でもある。
『ガンダムSEED』の世界では、遺伝子操作によって優秀な能力を持って生まれた「コーディネイター」が存在する。遺伝子研究の第一人者であるユーレンは、人類の進歩を願って研究に取り組んでいた。そして最高のコーディネイターを作るため「人工子宮」の開発を目指す。
しかし、いつしか己の研究に執着するあまりに暴走。多くの生命を生体サンプルとして扱い、非道な人体実験を繰り返すマッド・サイエンティストとなった。彼の妻であり、同じ研究者のヴィア・ヒビキから「あれは物ではない! 生命なのよ!」と咎められるが、ユーレンはそれでも研究を止めようとしなかった。
最終的に、ヴィアの胎内に宿った自分の子どもすら実験体にし、最高のコーディネイターであるキラが生まれる。その直後、反コーディネイター思想を掲げる「ブルーコスモス」の襲撃を受け、妻のヴィアともどもユーレンは命を落としたと思われる。この時キラはヴィアによって妹夫妻に預けられており、殺されることはなかった。
研究のために残酷な人体実験を繰り返したユーレンだったが、コズミック・イラの社会では「自分の望んだ容姿ではなかった」といった些細な理由で子どもを捨てる親が出るなど、深刻な問題が発生。その子どもを引き取って、兵士として育てる組織まで存在した。
ユーレンもまた、コズミック・イラという時代に起こった「コーディネイターブーム」の、ある種の犠牲者という見方もできるのかもしれない。
今回は『ガンダム』シリーズの中で印象的だったマッド・サイエンティストたちを振り返ってみた。もちろん劇中には、まっとうな科学者や研究者もたくさん登場する。皆さんの印象に残っているガンダム作品の科学者といえば誰だろうか。
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