井上雄彦氏が描いたバスケットボール漫画の金字塔『SLAM DUNK』の舞台・神奈川県は、全国でも屈指の激戦区として知られている。
絶対王者として君臨する海南大附属を筆頭に、翔陽や陵南、そして主人公・桜木花道のいる湘北といった実力校がしのぎを削り、数々の名勝負を生み出してきた。
しかし、帝王・牧紳一(海南)、藤真健司(翔陽)、そして赤木剛憲(湘北)に魚住純(陵南)といった、一時代を築いた3年生たちがコートを去ることで、神奈川の勢力図は大きく塗り替えられ、かつてない群雄割拠の時代を迎えようとしている。
今回は原作に加え、アニメ版や劇場版で描かれたオリジナル要素にも目を向けながら、次世代の強豪へと躍り出る可能性を秘めた「ダークホース校」を探ってみたい。
※本記事には作品の内容を含みます
■フィジカルモンスターが起こす下克上「三浦台」
来年度の神奈川において、最も“化ける”可能性を秘めているのは三浦台ではないだろうか。
原作における三浦台といえば、インターハイ神奈川県予選の初戦で湘北と対戦し、ビッグマウスな主将・村雨健吾のキャラクターの印象もあって、「新生湘北」の強さを際立たせるための引き立て役、いわば「かませ犬」として語られがちだ。
だが本来の彼らは、陵南の“データマン”・相田彦一に「しょっぱなから三浦台とはキツイですね湘北も」と言わしめるほどの実力を備えた、県内ベスト8常連の強豪なのである。
その三浦台を単なる「初戦の相手」に終わらせない存在として、アニメ版ではオリジナルキャラクターである2年生パワーフォワード・内藤鉄也という“秘密兵器”が用意されていた。
ラグビー部から引き抜かれた内藤は、身長196cm、体重155kgという規格外の肉体に加え、100mを11秒フラットで走る機動力まで備えたフィジカルモンスターだ。神奈川最大の魚住純(202cm、90kg)と比較しても、その“筋肉密度”の異常さは際立つ。
劇中、後半から投入された内藤は、赤木剛憲にパワーで競り勝ち、セットシュートも披露。流川楓に弱点を指摘される場面もあったが、裏を返せば伸びしろが大きいことの証明にもなるだろう。
赤木や魚住といった有力校のセンターが去り、インサイドが手薄になる新時代の神奈川において、内藤という“原石”が真のバスケットマンとして覚醒したとき、三浦台はゴール下を制圧し、勢力図を大きく揺るがす存在となるはずだ。
■若き指揮官と未完の大器「津久武」
次に挙げたいのが、古豪としての誇りと若き情熱が融合する津久武高校である。劇場版第2作『スラムダンク 全国制覇だ! 桜木花道』でのメインの対戦校であり、原作でも湘北と「4回戦(ベスト16)」で激突した実力校だ。
チームを率いるのは、就任3年目の若き指揮官・川崎一美。実は彼は安西監督の教え子であり、現役時代のガード経験を活かし、スタミナとパスワークを軸とする「走るバスケ」を掲げる。その戦術の核となるのが、彼直伝の3Pシュートだ。
主将・伍代友和(3年)の高精度シュートは三井寿をも脅かした。伍代は引退するものの、その「外から射抜く」というイズムは確実に後輩たちへと受け継がれていくだろう。
さらに、1年生センター・南郷洸一郎の存在も大きい。192cmの長身で桜木と渡り合う瞬発力と闘争心は、次世代を担うセンターとしての資質を十分に感じさせた。来季にはさらなる成長が見込まれ、チームを新たなステージへと引き上げる原動力となるだろう。
あと一歩で決勝リーグ進出を逃した津久武だが、チームとしての土台はむしろ盤石といえる。監督不在の翔陽と比較しても、情熱的な指導者のもと、確立されたシュート戦術を軸にチームを鍛え上げられる環境は大きな強みだ。
南郷のインサイドでの成長とともに攻守のバランスが整ったとき、彼らは「古豪」の枠を超え、神奈川の上位争いに食い込む存在へと躍り出るだろう。


