■仲間たちの過去に隠された伏線
続いては、炭治郎の同期の鬼殺隊士である我妻善逸にまつわる伏線である。彼の師匠は、元・鳴柱の桑島慈悟郎という人物だ。
アニメ第十七話「ひとつのことを極め抜け」にて、那谷蜘蛛山の兄蜘蛛との戦闘中に挿入される善逸の回想シーンで初登場した彼は、修行の中で雷の呼吸・壱ノ型しか習得できない善逸に対し「1つのことを極めろ」と説く。
それでも善逸は修行から逃げ出そうとすることが常であったが、桑島は彼を見捨てることなく、時には本当の家族のように諦めずに善逸に稽古をつけた。その姿は、まさに理想の「師匠」そのものであった。
また、細かいシーンだが、最終選別へ行くのを嫌がった善逸は桑島に何度もビンタされて送り出されたようで、選別時には顔が腫れている様子も見られる。
そんなシーンの端々から、善逸が本心では桑島に心を許し、甘えていることが窺える。また登場時からいつもヘタレでコミカルなシーンが目立っていたのだが、この回では、彼の真摯で秘めた心の内面が描かれているのも新鮮だ。
そんな善逸がこれまでにない表情を見せたのが「柱稽古編」である。雀のチュン太郎が運んできた手紙を呼んだ彼は、いつものテンションはどこへやら、1人静かに考え込んでいるようだった。この手紙の内容は「無限城編」で明かされることになるが、「立志編」で描かれたこの短い回想シーンが、善逸の背負う物語をさらにくっきりと縁取っている。
『鬼滅の刃』では家族の絆に関する話が多いが、嘴平伊之助の母親と思われる人物も「立志編」で1度だけ登場している。
第十八話「偽物の絆」では、血まみれの若い女性が「ごめんね伊之助」と、赤ん坊の伊之助を抱いて涙を流すシーンが見られる。崖の下からその光景を見上げる幼い伊之助は、それが誰なのか分かっていない様子だった。
この一見何気ない短いシーンもまた、後の物語で伊之助の出自を解き明かす上で極めて重要な伏線となっているのである。
このように、つい見過ごしてしまいがちな短いシーンにも、物語の根幹へ繋がる重要な意味が込められていることがある。
今回の再放送で「立志編」を見直す際は、ここまでの物語を全て見てきた上でこうした細かいシーンや演出に注目してみると、登場人物たちのさらに深い一面に出会えるかもしれない。



