『しゃれこうべの歌』に『ふとんの話』、『仏島』も…大人になって見ても怖い…『まんが日本昔ばなし』背筋が凍る「怪談エピソード」の画像
アニメ『まんが日本昔ばなし』Blu-ray第1巻(東宝) (C)2023 愛企画センター

 1975年から約20年間にわたりTBS系列などで放送された『まんが日本昔ばなし』。市原悦子さんと常田富士男さんの温かみのある語り口は、今なお色褪せることのない記憶として刻まれている。

 その人気は、令和の時代においても健在だ。2025年10月に開設された公式YouTubeチャンネルは、登録者数が早くも31.6万人を突破。世代を超えて幅広く支持されている。

 そんな本作には心温まる教訓話が多い一方で、子ども向けとは思えないほど恐ろしく、背筋が凍るような「怪談・ホラーエピソード」も少なからず存在している。

 そうしたエピソードは、単にお化けが登場する恐怖だけでなく、人間の持つ業の深さや悲痛な怨念が生々しく描かれており、当時の子どもたちに強烈なインパクトを与えた。

 今回は、そんな数ある恐怖エピソードの中から、特に印象深いものを紹介したい。

 

※本記事には各作品の内容を含みます

 

■ポップな絵柄からは想像できない戦慄の展開『しゃれこうべの歌』

 『しゃれこうべの歌』は九州地方に伝わる民話を元にしたエピソードだ。

 あるところに、千三と万三という仲の良い男がいた。2人は高みを目指し上方へ働きに出るが、千三は真面目に働く一方で、万三は堕落し酒を飲むばかり。そんな万三を案じた千三は、一緒に故郷へ帰ろうと提案するのであった。

 しかし帰路の途中、万三は千三が貯めた金に目がくらみ、あろうことか親友の首を切り落として殺害してしまう。それから3年後、万三が千三を埋めた竹やぶを通りかかると、千三のしゃれこうべ(頭蓋骨)が“一緒に金を儲けよう”と歌いかけてきた。

 万三はこれを利用して見世物小屋で大儲けするが、噂を聞きつけた殿様の前ではしゃれこうべは一切歌わない。激怒した殿様によって、万三は打ち首に処されてしまった。

 このアニメは丸みを帯びたポップで可愛らしい絵柄で描かれているにもかかわらず、その内容は親友を裏切って惨殺するというあまりに救いのない物語である。

 雷鳴が轟く中、おもむろに万三が立ち上がり、懐から刀を出すシーンは恐ろしいの一言。また、打ち首になった万三に対し、宙に浮かび上がった千三のしゃれこうべが“願いがかなった”と歌うラストシーンもかなり不気味だ。

 明るい絵柄だからこそ底知れぬ人間のドロドロとした闇が際立ち、視聴者の脳裏に焼き付く恐怖エピソードとして語り継がれているのである。

■朝ドラでも話題になった悲惨な兄弟の怨念『ふとんの話』

 『ふとんの話』は、NHK連続テレビ小説『ばけばけ』にも登場した小泉八雲の「鳥取のふとんの話」を元にした怪談エピソードだ。

 ある田舎町にできた新しい宿屋。2階の部屋で寝ると、夜な夜な布団の中から「兄さん、寒かろう」「おまえ、寒かろう」という子どもの話し声が聞こえてくる。

 不審に思った主人が古道具屋に事情を聞くと、この布団の悲しい由来が明らかになる。

 この布団は、かつて貧しい借家に住んでいた幼い兄弟のものだったという。両親を亡くし、厳しい冬の寒さの中、家賃が払えずに最後の布団まで取り上げられた兄弟は、互いを抱き締め合いながら凍え死んでしまったのである。

 それを知った主人は兄弟の魂が宿る布団を観音堂に納めて供養すると、その後、この布団から声は聞こえなくなったという話である。

 本作のアニメは版画の切り絵風で描かれており、静かな夜中に囁き声が聞こえる不気味な布団の描写が恐ろしい。そこに重なる市原さんの悲痛な囁きも、物語の哀しさを一層引き立てている。

 このエピソードには、恐ろしい化け物や幽霊は一切登場しない。ただ1枚の古い布団から、凍死していった幼い兄弟の最期の会話だけが静かに響いてくるのだ。

 怪談としての恐怖はもちろんあるが、それ以上に、貧困という現実の絶望と、最後まで互いを思いやる兄弟愛があまりにも切ない。当時の社会の無情さと命の儚さを突きつける、『まんが日本昔ばなし』屈指の悲哀に満ちたエピソードだと言えるだろう。

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