■名将・高頭力が振るう「智将」の采配

 海南の盤石さを支えるもう一つの柱が、高頭監督の鋭い洞察力と、時に非情ともいえる合理的な采配だ。ふだんは扇子を仰ぐ温厚なおじさんといった風貌だが、試合が始まればわずかな時間で相手の弱点を見抜く「智将」の顔を覗かせる。

 その最たる例が、湘北戦での「宮益投入」だ。急成長する桜木のポテンシャルをいち早く危険視した高頭監督は、あえて体格で劣る宮益をマッチアップさせた。この意表を突く采配は、格上の相手にこそ奮起する桜木のリズムを乱し、一時コートから追い出すことに成功している。

 また、前年度に敗れた山王工業のゾーンプレスを組織的に研究し、チーム全体で対策を講じるなど、全国制覇への準備にも余念がない。

 選手の努力を認めつつも、勝負のためには客観的な判断で最適解を導き出す。この指揮こそが、海南を“負けないチーム”たらしめている。この「現場」と「マネジメント」の歯車が完璧に噛み合っている点に、海南の真の恐ろしさがあるように思う。

■来年以降の展望…伝統は次代へと繋がる

 牧と高砂一馬という大黒柱が抜ける来年度、確かにインサイドのパワー不足は懸念材料となるだろう。

 しかし、得点王の神は健在であり、さらに「No.1ルーキー」を自称する清田信長がチームをけん引する海南新チームは、機動力とアウトサイドシュートを武器とする新たなスタイルの強豪へと進化を遂げるに違いない。

 さらに注目すべきは、新たに門を叩く「新1年生」たちの存在だ。元々、全国屈指の強豪である海南は「全国準優勝」という実績から「日本で2番目に強いチーム」というブランドが備わった。スカウティングにおいて前年度以上に絶大な武器を得たことになり、全国トップクラスの有望株が集まることが予想される。

 しかし、そうしたエリートたちが入部しようとも、海南の過酷な練習が彼らをふるいにかける。1年間で8割が脱落する厳しい環境を生き残った者だけが、紫と黄色の王者のユニフォームを手にすることが許される。この伝統こそが、海南の強さの源泉だ。たとえ牧という絶対的なエースが去っても、地獄の練習に耐え抜いた神や宮益のような「仕事人」たちが、必ずその穴を埋めていくだろう。

 海南の真の強さは、特定の個人に依存するものではない。高頭監督の戦術眼、努力家を戦力として見出す育成力、そして何より「生存率2割」の壁を越えた精鋭たちで構成されるという揺るぎない「システム」そのものが、ライバル校を恐れさせる強さの正体なのだ。

 

 「神奈川の王者」として君臨し、インターハイ神奈川県予選17連覇、そして全国準優勝という実績を残した海南大附属。偉大なキャプテン・牧紳一らの引退は、たしかに一つの時代の終焉を予感させるが、神や清田といった次代の主力が残り、そして「努力の伝統」も確実に受け継がれている。

 「来年は弱体化する」という評価は、過去何度もささやかれてきただろう。しかし、彼らは常にその予想を裏切り、17年もの間、神奈川の頂点に立ち続けてきたはずだ。地獄の練習を耐え抜いた新たな精鋭たちが台頭する限り、海南が次年度も神奈川の中心的存在であり続けるだろう。その先にある「悲願の全国制覇」も、決して夢ではないはずだ。

 

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THE FIRST SLAM DUNK
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