■死闘の果てに待っていたあまりにもあっけない結末…『封神演義』一般兵

 1996年より『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された藤崎竜さんの『封神演義』は、中国の古典怪奇小説を原作に、独自の解釈を加えた能力バトル漫画である。

 作中には原作にも登場する数々の仙人たちが登場し激闘を繰り広げるのだが、その中でもまさかの結末を迎えたのが、崑崙山の道士・黄天化ではないだろうか。

 バンダナを巻いた革ジャン姿の青年で、どんな相手にも臆せず立ち向かう根性と負けず嫌いな姿が印象的な黄天化。そんな彼に悲劇が訪れるのが、殷の王・紂王との戦いでの一幕である。

 これまでの戦いですでに深手を負っていた黄天化だったが、それでも闘争心を奮い立たせ、禁城にて紂王と一騎打ちを繰り広げる。

 宝貝を使わず、剣技のみで激突する2人であったが、黄天化は紂王を精神的にも追い詰めることに成功。

 負けを認め、己の首を跳ねろと告げる紂王だが、黄天化はこれを拒否。そして、あえて命を奪わず、勝利したことによって戦線から退く決意を固めた。

 だが、そんな彼に突如背後から1人の兵士が襲い掛かった。なんと、これまで戦いを見届けていた紂王の部下である兵士が、錯乱し黄天化を背後から刺し貫いたのだ。完全に虚を突かれた黄天化は対応できず、その凶刃を体に受けてしまった。

 あまりにもあっけない自身の最期に自嘲の笑みを浮かべる黄天化だったが、この一刺しが致命傷となり、彼はそのまま封神されてしまうのである。

 因縁の2人による激闘の幕切れが、名もなき一兵卒の奇襲であったという展開は、なんともあっけなくインパクトを残した。死力を尽くして戦い抜いた黄天化を待っていた、あまりにも無慈悲な最期に、読者も唖然としてしまっただろう。

 

 どれほど強大な力を持つキャラクターであっても、油断や不意打ちといった一瞬の隙が命取りになることがある。

 名もなきモブキャラクターがまさかの形で強者を打ち破る展開は、読者や視聴者に「本当の強さ」の意味を改めて問いかけるものだ。

 完璧に見える強キャラが見せる一瞬の隙と、その虚を突いたモブキャラたちのまさかの一手は物語に予想外の衝撃を与え、今もなお多くのファンの記憶に刻まれ続けている。

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