1984年から『りぼん』(集英社)で連載が始まった、岡田あーみん氏の漫画『お父さんは心配症』。本作は、少女漫画の概念を覆すハチャメチャすぎるギャグと強烈なキャラクター描写で、連載終了から数十年が経った現在でもたびたび話題になるほど「伝説の作品」として語り継がれている。
本作は高校生の一人娘・佐々木典子を溺愛するあまり過剰に心配する中年男性・佐々木光太郎を主人公とした、破天荒なストーリーだ。妻に先立たれた光太郎は娘の典子を大事に思うあまり、彼女のボーイフレンドである北野に異常なほどの敵対心を燃やす。彼を包丁で刺したり火をつけたりするなど、常軌を逸した暴走を繰り広げるのだ。
しかし、そんな『お父さんは心配症』のハチャメチャな内容は知っていても、最終回がどうなったかを覚えている人は少ないかもしれない。意外にもハートフルな展開を見せた本作の最終回を紹介したい。
※本記事には作品の核心部分の内容を含みます。
■少女漫画界に咲くドクダミの花…『お父さんは心配症』はとんでもない漫画だった
『お父さんは心配症』の作者・岡田あーみん氏は、当時『りぼん』で「少女漫画界に咲くドクダミの花」と称されるほど異色の漫画家であった。
その頃の『りぼん』は、池野恋氏の『ときめきトゥナイト』や、水沢めぐみ氏の『ポニーテール白書』といった王道ラブストーリーが主流であり、キュートな女子学生と素敵なヒーローのキラキラした恋愛模様を描く作品が人気を集めていた。
しかし、『お父さんは心配症』は、パピィこと中年男性の光太郎が主役である。しかも、光太郎は娘・典子のボーイフレンドである北野を執拗に追いかけまわし、簡単にいうと半殺しの目に遭わせるといったとんでもないストーリーが展開される。
連載当初は典子と北野の学園生活を中心に話が進んでいたが、物語が進むにつれて、光太郎の会社の仲間やお見合い相手など、非常に個性的な仲間が増えていった。
そんな彼らとジャングルに迷い込んだり、幽霊に取り憑かれたりと、もはや何でもありの予測不能なギャグ漫画へと変貌を遂げていくのである。
本作は、当時の『りぼん』の中で群を抜いて風変わりな作品だった。しかしきらびやかな少女漫画の世界に突如として現れた『お父さんは心配症』のホラーギャグともいえる独自のテイストは、良くも悪くも(?)少女たちの心を鷲掴みにしたのである。
■死んでもエンマ大王に拒否される!? 最終回直前の衝撃展開「光太郎の死」
『お父さんは心配症』にはたくさんの個性的なキャラクターが登場するが、物語のキーパーソンとなるのが、光太郎のお見合い相手である安井千恵子である。
安井さんもかなりエキセントリックな人物ではあるが、光太郎は彼女の心を掴むために空回りした努力を重ね、それが毎回のように大騒動につながるのだ。
そんな光太郎だが、最終回を目前にして通り魔に襲われたあげく車に轢かれ、命を落としてしまう。光太郎の死を悲しみ、集まる仲間たち。そこに安井さんも現れ、「こんなに愛しているのに…信じたくない」と涙を流す。
それを見た幽霊の光太郎は、お経をあげる和尚の体に乗り移ったり、北野の体を乗っ取って生き返ろうとしたり、またもやハチャメチャな展開になっていく。その一部始終を“あの世”から見ていたエンマは焦り、「永久にこの世で生きててもらおう」と、光太郎を生き返らせるのである。
こうして一度は死んだはずの光太郎は無事に蘇り、その場で安井さんへ「…愛しています 結婚して下さい…」とストレートにプロポーズをする。それに対し、安井さんは泣きながら「……ハイ」と受け入れた。
それまでのシュールで大混乱を巻き起こしたギャグ展開から一転、真摯なプロポーズが成功するという、最終回に向けた大団円を迎えるのである。


