■人間大切なのは中身と言い切る潔さが魅力『桜蘭高校ホスト部』藤岡ハルヒ

 葉鳥ビスコさんによる『桜蘭高校ホスト部』は、2002年から2010年まで『LaLa』(白泉社)にて連載された人気ラブコメディだ。

 超富裕層の子息令嬢が通う私立桜蘭学院に、一般庶民ながら特待生として入学した主人公・藤岡ハルヒ。静かに勉強できる場所を探して第三音楽室に迷い込んだ彼女は、「ホスト部」が所有する800万円の花瓶を割ってしまったことから、その借金返済のために性別を隠してホスト部員として働くことになる物語である。

 ハルヒが部長の須王環をはじめとするホスト部の美青年たちから異常なまでにモテる理由は、彼女の“性別や家柄に全く無頓着なスタンス”にあるだろう。ハルヒはセレブな男性たちからの甘い言葉やお姫様扱いにも一切なびかない。“男とか女とか外見とかどうでもよい、人間大切なのは中身でしょう?”と言い切るハルヒの達観した態度は、彼らにとって新鮮であり、衝撃的だったのだ。

 作品を読み返すと、特別扱いされることに慣れきっていたホスト部の面々にとって、ハルヒの存在がいかに特別であったかが分かる。見栄や家庭の事情によって縛られてきた彼らを“ただの1人の人間”としてフラットに扱ってくれるハルヒのあり方は、彼らにとって究極の癒やしとなったのだ。

 女性として特別扱いしても効果がないからこそ、部員たちは“どうにかして自分を男性として意識させたい”と躍起になり、結果的に全員が彼女のマイペースな魅力に巻き込まれていく。

 性別すら超越した彼女の人間的魅力こそが、彼女が最強に愛される理由なのだろう。

 

 今回紹介した3人は、いずれも美しい容姿の持ち主ゆえ、男装が似合うともいえるだろう。しかし、彼女たちの行動を振り返ると、その魅力の根源は「見た目」よりも、困難に立ち向かう強さや、他者を思いやる優しさといった「人としての在り方」にあると気づかされる。

 時代を先取りしたともいえる彼女たちのたくましくも美しい生き様は、現代を生きる私たちにとっても、自分らしく生きるためのヒントになりそうだ。

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