『ダイの大冒険』に『約束のネバーランド』、『ポケットモンスター』にも…漫画・アニメで描かれた「異種族同士の親子愛」の画像
Blu-ray『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』第4巻(エイベックス・ピクチャーズ) (c)三条陸、稲田浩司/集英社・ダイの大冒険製作委員会・テレビ東京 (c)SQUARE ENIX CO., LTD.

 「親子」という関係は、必ずしも血のつながりだけを意味するものではない。共に過ごした時間が育む絆や、理屈を超えて「守りたい」という慈しみの心。それらはときに、血縁以上に強い結びつきを証明してくれる。

 とくに漫画やアニメの世界では、本来ならば相容れないはずの種族すら異なる存在同士が、たしかな“親子関係”を築くことがある。

 今回は、そんな特別な絆で結ばれた親子3組を振り返っていきたい。

 

※本記事には各作品の内容を含みます

 

■『ダイの大冒険』バルトスとヒュンケル

 『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(監修:堀井雄二氏、原作:三条陸氏、作画:稲田浩司氏)の人気キャラクター・ヒュンケル。

 彼は物語の序盤、魔王軍の不死騎団団長として主人公ダイたちの命を執拗に狙う強敵として登場する。なぜ彼はあれほどまでに激しい憎しみに突き動かされていたのか。その原点には、育ての親である魔族の父・バルトスの存在があった。

 ヒュンケルを育てたのは、6本の腕を持つ骸骨のモンスター、“地獄の騎士”バルトスである。彼は戦火の中で拾った人間の赤ん坊に「ヒュンケル」と名づけ、地底魔城で我が子として育て上げた。ヒュンケルも彼を「父さん」と呼び慕い、2人の間には種族を超えた親子としての時間が流れていた。

 だからこそ、父の喪失はヒュンケルに大きな影響を与えた。勇者アバン一行による魔王ハドラー討伐の混乱の中、バルトスはヒュンケルの目の前で命を落としてしまう。

 灰となり消えていく父の死をアバンによるものだと誤解したヒュンケル。彼は復讐を誓いながらも、仇であるアバンに弟子入りするという歪んだ道を歩み始め、やがて憎しみの矛先は弟弟子であるダイたちにも向けられていく。

 だが、その憎しみを支えていた前提そのものが、やがて根底からくつがえされる。生前バルトスが自身の最期を悟った時、残されるヒュンケルの未来を案じ、「この子に本当の人間の温もりを与えてほしい」とアバンに託していたのだ。敵であるはずの相手に我が子の行く末を委ねる——それは、まさしく“父”としての最後の決断であった。さらに、彼に死をもたらしたのはアバンではなく、ハドラーによる粛清であったという事実も明らかになる。

 すべての真実を知ったとき、ヒュンケルの憎しみは行き場を失い、静かにかたちを変えていく。やがて彼は過去を乗り越え、ダイの強力な仲間として共に戦う道を選ぶ。その姿は、ジャンプ漫画ならではの熱いカタルシスを我々読者にもたらしてくれることとなるのである。

■『約束のネバーランド』名もなき鬼とアイシェ

 『約束のネバーランド』(原作:白井カイウさん、作画:出水ぽすかさん)において、人間と鬼の絶対的な対立構造に新たな視点をもたらしたのが、アイシェという少女である。

 「七つの壁編」で初登場した彼女は3匹の犬を従え、人間の言葉を話さない狙撃の名手として異質な存在感を放っていた。

 アイシェを育てたのは、なんと1体の鬼であった。人間を食用として飼育する農園で下働きをしていたその“名もなき鬼”は、醜い顔が原因で孤独な日々を送っていた。そんな彼が偶然出会ったのが、顔に痣を持ち、「不良品」として廃棄されかけていた人間の赤ん坊だったのである。

 本来ならば、人間は鬼にとって食料でしかない存在だ。ましてや農園の所有物である赤ん坊を盗むことは、たとえ廃棄寸前であっても重罪だ。それでも彼は、その小さな命を拾わずにはいられなかった。

 彼は赤子にアイシェと名づけ、やがて農園を辞めて森の奥深くで彼女と共に生きることを選択する。そこで始まったのは、捕食者と被食者という関係を完全に逸脱した、ささやかでたしかな“親子”としての暮らしであった。

 彼がアイシェに与えたのは寝床や食料だけではない。生き延びる術、そして何よりもまっすぐな愛情だった。アイシェもまた、その鬼を「父さん」と呼び、2人にはまぎれもなく親子の絆が育まれていった。

 だが、その静かな幸福はあまりにも唐突に終わりを迎える。ノーマン率いる人間たちが、アイシェを「救出」するために現れ、父である鬼の命をあっけなく奪い去ったのである。

 父を奪われた憎しみを胸の奥に押し込みながら、言葉を捨て、アイシェはノーマンたちと行動を共にする道を選ぶ。人間にも鬼にも寄り切らないその在り方は、後にムジカとソンジュを救おうとするドンやギルダにとって思いがけない助け舟となった。

 あの場面で彼女がいたことに、どこか救われたような感覚を覚えた読者も多いのではないだろうか。

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