■宿敵の勇者にも認められるほどの気高い最期
ハドラーの魅力が最高潮に達するのは、その壮絶かつ気高い死に様ではないだろうか。
ダイとの最終決戦に敗れた彼は潔く負けを認めた。静かに敗北を受け入れるその表情は、清々しく晴れやかだった。
その後、キルバーンのトラップによって一行は凄まじい業火に襲われる。絶体絶命の状況の中、ハドラーは自らの身が砕け散るのも構わず、ダイとポップを勇気づけて脱出を助けようとする。敵だった自分をも最後まで見捨てようとしないポップの心意気に触れ、ハドラーは初めて涙を流し、神に祈りを捧げるのだ。
長きにわたり悪役だった彼が、もはや正義の味方のように映るこの場面は、物語屈指の名シーンだ。多くの読者が「何とか助かってくれ!」と、固唾を呑んで見守ったことだろう。
極めつけは、復活したアバンとの再会である。かつての宿敵が命をかけて自分の弟子たちを救おうとする姿にアバンは驚き、彼を真の好敵手として認める。この場面は、ハドラーの成長物語の集大成ともいえる胸熱シーンである。
そして最後にハドラーは、アバンの腕の中で粉々になり命を落とす。アニメ版ではこのシーンは特に感動的に描写され、涙なしには語れない。エンディング曲が流れない静寂の中で、ハドラーはアバンを見つめながら瞼を閉じ、「オレの死に場所を…この男の腕の中にしてくれるとは…な…」という言葉を遺して、静かに息を引き取るのである。
物語の序盤においてハドラーは、鼻水を垂らしながらダイに怯え、保身を第一に考える小物的な悪役という印象が強かった。だが、彼はパワーアップを繰り返しては何度も敗れ、いつしか自分の弱さと向き合い、読者に深い感動を与えるキャラクターへと変貌を遂げた。
漫画を読んでいた当時、筆者もまだ若かったこともあって、彼は単なる嫌な悪役という印象しかなかった。
だが、大人になってから本作を読み返すと、彼の立場や苦悩に共感できる部分も多い。トップの地位から転落しながらも、プライドを捨てきれずにもがき、やがて精神的にも大きく成長を遂げる。その不器用ながらも真っ直ぐな生き様と誇り高き最期は、時代を超えて我々の心を強く打つのである。


