あんなに嫌いだったけど…『ダイの大冒険』大人になったから分かる「ハドラーの魅力」真の武人へと成長した男の気高い最期までを振り返るの画像
「ARTFX J ハドラー」【コトブキヤショップ限定品】(コトブキヤ)(C)三条陸、稲田浩司/集英社・ダイの大冒険製作委員会・テレビ東京 (C)SQUARE ENIX CO., LTD.

 不朽の名作バトル漫画『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(監修:堀井雄二氏、原作:三条陸氏、作画:稲田浩司氏)は、連載終了から30年という長い年月が経った今もなお、多くのファンに愛され続ける作品だ。主人公・ダイや仲間のポップが冒険を通じて成長していく過程は、原作ゲーム『ドラゴンクエスト』シリーズが持つ魅力の1つでもあった。

 本作において、ダイたち勇者一行の宿敵ともいえる魔王軍の魔軍司令・ハドラーもまた、物語の中でパワーアップを重ねていく存在だ。

 連載当初は、人気キャラクターである勇者の家庭教師・アバンを倒した憎き敵だったハドラー。しかし物語が進むにつれ、彼はダイやポップと同じように大きく成長を遂げていく。その姿にいつしか感情移入してしまった読者は、筆者だけではないだろう。

 今回は、大人になった今だからこそよく分かる、ハドラーの魅力について紹介していこう。

 

※本記事には作品の内容を含みます。

 

■指揮官ながら、自ら最前線に赴く行動力

 ハドラーは、強大な魔力による遠距離攻撃と地獄の爪(ヘルズクロー)を駆使した近接格闘術に優れている。肉体も極めて頑丈であり、まさにボスキャラクターとしてふさわしい存在だった。

 一般的な物語やゲームにおけるボスキャラといえば、自分は安全なところにいながら、部下を主人公のもとへ送り込むのが定石だ。これは現実の歴史においても同様で、総大将が討ち取られると敗戦は濃厚となるため、指揮官は後方でどっしりと構えているのが常である。

 しかし、ハドラーは自ら前線に赴く。作中、デルムリン島でのアバンとの戦いや、バルジ島でのヒュンケルとの戦いにおいても、彼は自ら戦いに臨んでいる。また、物語の後半では、自分の体を超魔生物へと改造し、地上最強の親子ともいえるダイとバランを単身待ち構えていたほどだ。

 これは現代の組織にたとえるならば、現場に足を運ぶ上司(管理職)といえるだろう。しかも、彼はただ見て回るだけでなく、自ら体を動かして最前線で部下と共に戦うのである。

 このような上司の行動力は組織の士気を鼓舞し、適度な緊張感を生む。結果として部下の集中力を高め、ミスを減らすことにもつながるだろう。

 もちろん、超魔生物になる前の冷酷なハドラーであれば、部下の些細なミスも許さず、地獄の炎(メラ)で焼き払ったかもしれない。だが、物語を通じて成長した後の、自らの背中で部下を導くハドラーのような上司は、多くの社会人が憧れる理想の姿といえるだろう。

■部下に慕われる熱い思い…親衛騎団との深い絆

 超魔生物に進化したハドラーは、その功績を大魔王バーンに認められ、褒美としてオリハルコンで作られたチェスの駒を授けられる。ハドラーはこの駒を使い、禁呪法を用いて5体の駒からなる自分の部下・ハドラー親衛騎団を誕生させた。

 大魔道士・マトリフいわく、禁呪法によって生み出された生命体には術者の性格が色濃く反映されるという。事実、過去にハドラーが生み出した氷炎将軍・フレイザードは、術者である当時の彼を映すかのように、残忍で自己中心的な性格だった。

 しかし、兵士(ボーン)・ヒムや騎士(ナイト)・シグマに代表されるように、親衛騎団の面々は騎士道精神を持ち、仲間を大切にし、正々堂々と敵に戦いを挑む立派な心を持っていた。これは、ハドラー自身が精神的に大きく成長した証といえるだろう。彼はこれまで欠けていた勇者一行にも負けない“心の強さ”を手にしたのだ。

 この成長によって、ハドラーと親衛騎団は固い絆で結ばれる。後にハドラーがバーンに反旗を翻した際、親衛騎団はミストバーンとキルバーンに人質に取られてしまう。だが、それでもハドラーの覚悟は揺らぐことなく、「我らハドラー親衛騎団は一心同体!!」と叫び、バーンに真っ向勝負を挑んだ。その姿はヒムに深い感銘を与え、後に彼が死の淵から生還するきっかけにもなる。

 だがその頃、体内に埋め込まれた爆弾「黒の核晶(コア)」の影響で、ハドラーには死期が迫っていた。忠臣である女王(クイーン)・アルビナスは自らの手でアバンの使徒を抹殺し、その功績をもってバーンにハドラーの命を救ってもらおうと考える。

 しかし、アルビナスはマァムとの激闘の末に敗れ、力尽きてしまう。その最期に彼女は「ハドラー様を…生かしたかった… 一瞬でも…一秒でも長く……」と、胸に秘めた主君への忠誠と想いを打ち明けるのである。

 部下たちから自然と慕われるようになったハドラーの生きざま、そして彼と親衛騎団の深い絆は、多くの読者の胸を打つものであった。

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