作者天才すぎ!『鋼の錬金術師』誰もが予想できなかった「見事な伏線回収」消えた古代国家の真相、錬丹術師の違和感、ヒューズの遺した言葉も…の画像
DVD『鋼の錬金術師』FULLMETAL ALCHEMIST 3(完全生産限定版) (アニプレックス)(C)荒川弘/鋼の錬金術師製作委員会・MBS

 荒川弘氏が描くダークファンタジーの名作『鋼の錬金術師』。連載終了から15年以上が経過した今もなお、多くのファンから愛されている理由のひとつが、物語全体に張り巡らされた緻密な伏線構成にあるだろう。

 序盤で何気なく散りばめられた小さなヒントが、物語が進行するにつれて国家を揺るがす巨大な陰謀や、登場キャラクターたちの過酷な運命と結びついていく展開はまさに圧巻だ。

 今回は、数ある伏線の中でも、読み返すたびにその巧妙さと緻密さにあらためて驚かされる3つの伏線回収を振り返ってみたい。

 

※本記事には作品の核心部分の内容を含みます。

 

■消えた古代国家の真相…クセルクセス遺跡は“グラトニーの腹の中”に

 東の大砂漠に位置し、「一夜にして滅亡した」と伝えられる古代国家クセルクセス。その謎めいた存在は、物語の比較的早い段階から言及されている。

 第40話「西の賢者」において主人公のエドワード・エルリック一行がこの地を訪れた際、そこには神殿のような巨大建造物の残骸と、一部が破損した巨大錬成陣の痕跡が残されていた。この光景は、国の滅亡に錬金術が深く関わっていることを強く印象づけるものだった。

 そんな重要な遺跡が思わぬかたちで再び姿を見せるのが、第50話「腹の中」での展開である。エドワードとシン国の皇子リン・ヤオが、ホムンクルスの1人「暴食」のグラトニーに飲み込まれてしまう。

 彼らが閉じ込められたのは、血の池とひたすら続く暗闇に包まれた異空間だった。そして、同じく飲み込まれていたホムンクルス・エンヴィーによって、この不気味な空間の正体が明かされるのである。

 それは、グラトニーこそが「お父様」によって作られた「偽りの真理の扉」であり、その製造過程でクセルクセスの全国民が犠牲になったというものであった。これこそが、古代国家クセルクセスが「一夜にして滅亡した」悲劇の全貌だったのである。

 その証拠に、第40話でエドがクセルクセス遺跡で欠けていて見ることができなかった巨大錬成陣の一部が、グラトニーの腹の中に存在していた。

 エドは欠けていたピースがそろったことで、この巨大錬成陣が“人体錬成の陣”であることを読み取り、自らの体を錬成陣に見立て、「生きた人間を錬成し直す」という前代未聞の方法で、絶体絶命の窮地から脱出を果たす。

 ホムンクルス・グラトニーの正体、古代国家の悲劇、そして絶望的状況を打開する展開が見事に結びついたこの一連の流れは、『鋼の錬金術師』を代表する伏線回収のひとつと言えるだろう。

■「足の下を何かがはいずり回っていル」…錬丹術師メイが感じたアメストリスの違和感

 アメストリスの錬金術とは異なるエネルギー体系「錬丹術」を操るシン国の人々の登場は、物語に新たな視点をもたらした。

 その中でも、シン国の皇女メイ・チャンは、地中を流れる“気”の流れ「龍脈」を読み取り、その力を錬成や医療に用いる錬丹術師である。その特異な能力を持つ彼女だからこそ察知できた、アメストリスという地そのものへの違和感——これこそが、本作に仕掛けられた巨大な伏線だった。

 それが示されるのが、第52話「魔窟の王」での一場面である。グラトニーとアルフォンスを追って地下へ向かおうとしたメイは、突如として立ち止まる。そして、恐怖に表情を引きつらせながら「この国に入ってから違和感を感じていたのですが」と語り出し、「足の下をたくさんの何かがはいずり回っていル…」と、足元から伝わる不気味な感覚を口にするのだった。

 この時点では、その言葉の意味ははっきりしていない。だが物語が進むにつれ、アメストリスという国家そのものが巨大な「国土錬成陣」として設計されていたという衝撃の事実が明らかになる。そして、その錬成陣を起動させるためのエネルギー源として、数多くの人間の命をもとに作られた「賢者の石」が、国の地下深くに無数に張り巡らされていたのだ。

 メイがアメストリスに入って以来感じ続けていた“たくさんの何か”の正体、それこそが地下に封じ込められた「賢者の石」に宿る無数の魂の存在だったのだ。

 錬金術とは異なる錬丹術という視点を通じて国家規模の陰謀をさりげなく示していたこの伏線は、本作の緻密な構成力を象徴する印象的な仕掛けだった。

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