■キャラの声を一般公募? 謎の実写コスプレ、伝説の「あの男」まで登場した『オタスケマン』
1980年放送の第4作目『タイムパトロール隊オタスケマン』では、視聴者だけでなく、「他作品」まで巻き込む遊び心が爆発します。
三悪の1人であるセコビッチが「今週の山場~っ!」のかけ声とともにボタンを押すと現れる「オーケストラメカ」。第13話では、オーケストラメカの指揮者が振り返ると、なんとその顔は『科学忍者隊ガッチャマン』のコンドルのジョー。自ら「番組間違えたかな」とボケを飛ばすという、タツノコ作品ならではセルフパロディが見られました。
さらに、そのオーケストラメカの後を継いで登場した「オハヤシ星人」は、なんと公募で選ばれた視聴者が声優を担当。この素人参加のノリは後のOVA版『タイムボカン王道復古』にも引き継がれ、漫画家の奥谷かひろさんや、全国のセコビッチファン代表として「ザ・ブルーハーツ」の甲本ヒロトさんが参加したことも伝説として語り継がれています。
また、番組終わりの「おまけコーナー」では、スタッフによる「謎の実写コスプレ」まで披露されました。まだ「コスプレ」という言葉すら一般的ではない時代に、第26話ではオタスケマン2人、翌27話では絶妙なクオリティの三悪たちの着ぐるみが登場。ブラウン管越しに見た渾身の悪ふざけ(誉め言葉)に驚いた視聴者は多かったはずです。
■主役がまさかの敗北!? サラリーマンの悲哀と「悪女の恋」が物語を彩った『逆転イッパツマン』
1982年放送の第6作目『逆転イッパツマン』は、シリーズの転換点となった作品です。前作『ヤットデタマン』からヒーローが男性1人となり、これまでナレーション担当だった富山敬さんが主役の青年・豪速九の声を担当。物語は一気にドラマチックかつ、シリアス展開へと突入していきます。
本作の特徴は、三悪が「シャレコーベリース社」という企業のサラリーマンとして描かれた点です。特に頭脳担当のコスイネンは、美人な妻と双子を持つ一家の主で、部下のために理不尽な上司に盾突くなど、シリーズ屈指の「有能で人望ある男」として描かれました。
同じポジションながら「全国の女子高生のみなさ~ん!」と叫んでいた『ヤッターマン』のボヤッキーとの落差に驚きを隠せません。
ちなみに現代ロボット工学の権威・古田貴之さんも「(アトムの)天馬博士より、コスイネンこそが僕の永遠のヒーロー」と公言するほど、視聴者の心に刺さるキャラクターでした。
また、視聴者を魅了したのが三悪リーダー・ムンムンの恋路です。自分を助けてくれた正体不明の男性「ミスターX」を豪だと思い込んだ彼女の健気でかわいい一面に、胸がキュンキュンした視聴者も多かったことでしょう。
そしてそんな愛すべき悪役たちが、番組史上最大の衝撃をもたらします。第30話で、コスイネンの意地とシャレコーベリース社支社長・隠球四郎の策略によって、なんと悪玉サイドが主役を倒し、「初勝利」を飾ったのです。
ヒーローが完膚なきまでに敗北して主役メカが爆破される光景に、「どうせ正義が勝ついつものパターンだろう」と高をくくっていた視聴者はあっけにとられました。
さらに最終回でも驚きの展開が待っていました。洗脳から解放されたハルカが能力の限界を超え、イッパツマンのスーツが消滅。「全裸で逃走」するという、昭和アニメならではの奔放すぎる幕引きで、まさに“衝撃”のオンパレードでした。
今回あらためて昭和の「タイムボカンシリーズ」を振り返ってみると、いかに自由で、エネルギッシュな作品群であったかを思い知らされます。「三悪」という愛すべき悪役の存在感に、メタ発言や視聴者まで巻き込む型破りな演出の数々。そして、お約束のギャグ展開の裏で、大人の悲哀や切ない恋心まで描いたドラマ性は見事です。
そのジェットコースターのような落差の大きい構成こそが、昭和キッズの心に「爆笑」と「衝撃」を刻みつけた最大の要因だったのかもしれません。


