■主人を助けようとした犬も最後は力尽きる『さだ六とシロ』

 最後に紹介するのは、秋田県に伝わる悲劇『さだ六とシロ』だ。

 鹿角の領に住む猟師・さだ六と、その相棒である優秀な秋田犬のシロ。さだ六は他の領地でも自由に猟ができる“特別な証文”を持つ名手だった。

 しかし、ある冬の日、獲物を深追いしすぎたさだ六は、誤って隣の国の領地に入り込み、役人に捕らえられてしまう。不運にも彼はその日に限って証文を家に忘れており、翌日の処刑が言い渡されてしまうのだ。

 主人の絶体絶命の危機を察知したシロは、家へ戻り、口に証文をくわえて再びさだ六の元へと急ぐ。しかしシロが戻った時、すでにさだ六は処刑された後だった。

 シロは変わり果てたさだ六の亡骸をくわえ、引きずりながら自分の家へ帰ろうとする。だが、ついに力尽き、自分の領地に入った峠の頂上で悲しい遠吠えをあげ、そのまま石になってしまうのだった。

 さだ六は嘘つき呼ばわりされた挙げ句に処刑され、忠犬の必死の努力も一切報われないという残酷すぎる展開。間に合わなかった時の絶望感と、さだ六を引きずり帰ろうとするシロの痛々しい姿が心に重くのしかかる。

 現在でもその場所は「犬吠峠」と呼ばれているという伝説のリアルさが、さらに物語の悲壮感を際立たせている。動物が主人のために尽くす物語は多いが、本作ほど結末が残酷なものは稀ではないだろうか。

 

 『まんが日本昔ばなし』は、今回紹介したエピソードのように理不尽な終わり方をする話も少なくなかった。

 そのような話を見ると、子どもの頃はただ「怖い」「悲しい」と感じていた。しかし、大人になってから改めて見返すと、そこには「人生は思い通りにはいかない」「自分の行いは巡り巡って返ってくる」という、目を背けたくなるような厳しい真理が隠されていることに気づかされる。

 今なお色褪せない『まんが日本昔ばなし』の物語は、私たちに生きる意味や他者への思いやりを深く問いかけ続けているのだ。

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