■金のために生きていた賞金稼ぎが、愛娘のために命をかけて戦った男「アイン」
ラオウ亡き後の「天帝編」に登場したアインは、これまで登場してきた拳士たちとは一線を画すキャラクターだ。
アメリカンスタイルの装いで我流の「ケンカ拳法」を操るアインは、当初は金(賞金)のために生きる賞金稼ぎであった。ケンシロウに対しても自信満々で戦いを挑むが、全く相手にならず平手を喰らう。その際口にした「やるじゃない」という軽妙なセリフは、今後の『北斗の拳』がまた違う一面を見せていく予兆にも思えた。
特別な拳法技術を持たないアインが戦う理由はただ1つ、愛する一人娘・アスカのためである。常に“俺はコレ(女=アスカ)のために戦っている”と小指を立てて公言し、娘を溺愛する不器用な父親なのだ。しかし、バットの“好きな女のために時代を変えてやる”という言葉に感銘を受けたアインは、アスカが誇れる父親になるため賞金稼ぎを辞め、北斗の軍に参加するのである。
最終的にはバットにアスカの未来を託し、安らかに息を引き取ったアイン。圧倒的な力を持たない男が、愛する娘のために自らを奮い立たせて戦う姿は、現代社会で家族のために奮闘する父親たちの姿にも通じるものがあるだろう。泥臭くも熱いその「父親」としての生きざまは、大人になったからこそ感情移入できる最高にカッコイイ姿なのである。
子どもの頃はただ「強いキャラクター」にばかり目が行きがちだったが、大人になってから読み返すと、また違う側面が見えてくる。ジュウザの自由な魂、シュウの無償の愛、そしてアインの不器用な父性といった、人間味あふれる、それでいて気高い信念に強く胸を打たれるのである。
連載開始から40年以上経過した今『北斗の拳』を読み直すと、当時とはまた違った感動があるだろう。彼らが命を懸けて守り抜こうとしたものの尊さが、より深く見えてくるはずだ。


