ケンシロウでもラオウでもない!?『北斗の拳』大人になると分かる「1番カッコ良い男性キャラ」ジュウザにシュウ、アインも…の画像
ゼノンコミックスDX『北斗の拳 究極版』第8巻(徳間書店)(C)武論尊・原哲夫

 1983年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載され、社会現象も巻き起こした『北斗の拳』(原作:武論尊氏、作画:原哲夫氏)。本作には多くの魅力的なキャラクターが登場するが、連載当時から主人公のケンシロウはもちろん、その親友のレイ、義兄のトキ、そして宿敵ラオウといった面々が高い人気を博していた。

 しかし、大人になってから作品を読み返してみると、本当にカッコいいキャラクターは他にも多くいることに気づく。実際に心惹かれるのは、むしろリアルな人間臭さを持ち合わせたキャラクターではないだろうか。

 そこで今回は、かつての人気キャラクターたちとは少し視点を変え、大人になった今だからこそ真のカッコ良さが分かるキャラクターをピックアップし、その魅力に迫りたい。

 

※本記事には作品の内容を含みます

 

■己の信念のまま自由に生き、最後は愛する女性のために散った男「雲のジュウザ」

 南斗五車星の一人“雲”の拳士であるジュウザは、『北斗の拳』に登場する多くの寡黙な男たちとは違い、自由奔放かつ愛嬌のあるキャラクターだ。

 ジュウザは南斗六聖拳「最後の将」を守護する立場でありながら、その束縛を嫌っていた。“俺は誰にも縛られねぇ!”をポリシーに、まさに流れる雲のような自由な生活を送るジュウザ。

 しかしこうした態度の裏には、かつて愛したユリアが実は腹違いの妹だったという絶望と悲しみが隠されていたのだ。ゆえに最後の将の正体がユリアだとを知った瞬間、ジュウザはそれまでの生きざまを捨て、自らの命をユリアのために投げ出し、拳王ラオウとの対決に挑む。

 それまで自由人として生きてきた人間が、1人の女性のために命を懸けて戦い抜いたその最期は圧巻だった。絶対的な力を誇るラオウに対し、変幻自在の「我流の拳」で挑み、致命傷を負いながらも腕ひしぎ十字固めでラオウの腕を折ろうと執念を見せる。

 さらに、ラオウから自白を強要される秘孔「解啞門天聴」を突かれて激痛に苛まれながらも、決して将の正体を明かすことはなかった。それどころか「け…拳王の…ク・ソ・バ・カ・ヤ・ロ・ウ…」と言い放ち、笑って息絶えたのである。

 普段はケロッとした表情を見せつつ、いざという時は愛する女性のために命を懸け、最後まで己の意地と信念を貫き通したジュウザ。大人になった今だからこそ、彼の背負った哀しみと、死ぬには惜しすぎるほどの「漢の美学」に深く心を揺さぶられてしまうのだ。

■自らの光と命をケンシロウや子どもたちに捧げた男「仁星のシュウ」

 南斗白鷺拳の伝承者であり、南斗六聖拳“仁星”の宿命を背負うのがシュウである。彼は独裁を敷く聖帝サウザーの圧政から子どもたちの未来を守るため、レジスタンスを組織して戦い続けた“盲目の闘将”だ。

 シュウの最大の特徴である失明した両目は、かつて南斗十人組手に挑んだ幼き日のケンシロウの命を救うため、自ら潰したものだ。ケンシロウに“誰よりも強く激しく光る可能性”を見出し、掟を破ることなく“かわりにおれの光をくれてやる”と自らの視力を引き換えにケンシロウを生かしたのである。

 そんなシュウの最期もまた、あまりに凄絶で、そして気高いものであった。

 サウザーとの決戦で100人の人質の命を盾に取られたシュウは、抵抗を諦めて足を斬られ、再起不能となる。そして、ボロボロの体で巨大な聖碑を担がされ、聖帝十字陵の頂上まで運びきった後、サウザーの放った槍に体を貫かれてしまうのだ。しかし、その瞬間に奇跡的に視力が回復し、立派に成長したケンシロウの姿に涙しながら、聖碑の下敷きとなって絶命するのである。

 シュウの登場は『北斗の拳』の中でも絶大な人気を誇っていたレイの死の直後だった。当時の筆者は、再びレイのような華麗なカッコ良い戦士の登場を期待していたので、兄貴分的なイメージがあるシュウにはちょっと物足りなさを感じた記憶がある。

 しかし、大人になってシュウの活躍を見返すと、他者のために自己を犠牲にし尽くしたその“無償の愛”に泣けてしまうのだ。未来を担う子どもたちのために人生を捧げる姿は、特に親世代になった読者の心に新たな感動を与えてくれるだろう。

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