花を傷つけたら処刑、大声を出したら処刑…『銀河鉄道999』星の住人を苦しめる「理不尽すぎる規則」の画像
[Blu-ray]『銀河鉄道999』(東映アニメーション・東映ビデオ)/(C)松本零士・東映アニメーション

 1977年から松本零士さんによって連載が開始された『銀河鉄道999』。銀河を旅する少年・星野鉄郎と、謎の美女・メーテルが銀河超特急999号に乗ってさまざまな出会いや冒険をするこの物語は、連載から半世紀経った今も人々の心を魅了し続けている。

 しかし、作中に登場する星々には、地球人にとって理解しがたいルールが存在することも多かった。人の命よりも植物が大切にされていたり、厳しすぎる規則によって住人が苦しんで生活しているケースも見られた。

 そこで今回は、その中でも特に「理不尽過ぎる規則」が敷かれていた星の数々を振り返っていこう。

 

※本記事には作品の内容を含みます

 

■亡き女王の執念が招く飢餓の連鎖「交響詩『魔女の竪琴』」

 「交響詩『魔女の竪琴』」は、死してなお権力に固執する統治者のエゴと、それに縛られ続ける民衆の悲劇を描いた物語だ。

 舞台は、透き通るような美しい海を持つ星。しかし、そこに降り立った鉄郎とメーテルを待ち受けていたのは極限まで飢えた人々の姿だった。

 食堂で提供された食事は空気で膨らませただけのものであり、給仕をする者たちも数日間何も食べていないという。その理由は、この星では収穫した食料のほぼすべてを女王に献上しなければ死刑にされるという、ひどい法律があったからだ。

 鉄郎たちは真相を確かめるべく女王の住む島へ向かう。そこで彼らが目にしたのは、200年も前に息絶えた女王の亡骸であった。女王は生前、自身の死後も機械装置に“心”を移植することで支配を継続させていたのだ。忠実な機械たちは主がいなくなった後も命令に従い、民衆から無慈悲に食料を奪い続けていたのである。

 しかも奪われた食料は誰の口に入ることもなく山積みとなり、腐敗している。メーテルは、いずれこの島は腐敗食料のメタンガスが引火して島ごと爆発するだろうと語っていた。

 権力者が不在となった後も悪法だけが独り歩きし、人々を苦しめ続けるという不条理。早くこの現状に住民たちが気づき、歪んだ法律を正すべきだが、極限まで飢えた彼らにその気力は残されていない。

 このストーリーは、一度組み込まれた不条理なシステムから抜け出すことの難しさと、市民の無関心が招く悲劇を鋭く描き出しているのである。

■美しい花が諸悪の根源「心やさしき花の都」

 花は人類にとって心を癒してくれる存在として親しまれているが、すべての星でそうとは限らない。なかには、美しい花のせいで人々が虐げられているケースもあるのだ。

 「心やさしき花の都」のエピソードにて「花の都」に到着した鉄郎とメーテル。そこはその名の通り花が咲き誇る美しい星であり、鉄郎も「すてきな星だね」と感嘆の声をあげる。

 しかしその直後、鉄郎はホテルでの爆発に巻き込まれ、コアと名乗る男に拉致される。彼の目的は、この星に咲き乱れる花々をすべて焼き払うことにあった。一見美しく見える「花の都」だが、実はそこに咲く花は猛毒を放つ危険な植物だったのだ。住民は特殊な防護服(テクタイト)なしでは生存できず、毒花粉の影響でわずか100年の間に人口の8割が失われたという。

 それでもこの星では花を傷つけることが法律で固く禁じられており、違反者は即座に死刑に処されてしまう。コア一家は、自らの命を投げ打ってでもこの悲劇の元凶を断ち切ろうとしていたのである。

 元をたどればこの毒花は、かつて岩だらけだったこの星を美しくしようと考えた人が、善意でどこからか持ち込んだものであった。良かれと思っておこなった行為が、時を経て星全体を蝕むとんでもない悲劇を招いてしまったのである。

 住民を救うために立ち上がったコア一家だが、その後、無情にも処刑されてしまう。

 過去の善意が「毒」となり、現在の善意が「罪」となる——あまりにも救いのない顛末に思わず胸が痛くなってしまうエピソードだ。

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