■ネットミームと化した謎の強者…「団長の手刀を見逃さなかった人」
作中では本名が明かされておらず、ファンから通称「団長の手刀を見逃さなかった人」と呼ばれる、ベレー帽を被ったアーミー風の男。登場時間はわずかだが、そのインパクトは絶大だ。
舞台はヨークシンシティ編で、ノストラードファミリーのネオンが突然気絶したシーンでのこと。監視映像を見ていた者たちが状況を把握できずにいる中、この男だけがクロロ=ルシルフルの不審な動きを見抜き、映像を巻き戻すよう即座に指示する。
再生された映像には、常人には到底捉えられない、居合抜きのような速さで放たれたクロロの手刀が映っていた。「おそろしく速い手刀 オレでなきゃ見逃しちゃうね」と言う、あまりに完成度の高い彼のセリフは、のちにネットミーム化して広く定着することになる。
さらにこの男、ただの観察役では終わらない。単身でクロロの残した血の匂いを追い、死体に紛れて身を隠していたクロロにナイフを投擲。見た目に違わず、戦闘を好む武闘派としての側面も見せた。
クロロはゾルディック家の人間に対抗できるほどの身体能力を有しているが、それでもこの男に対しては念能力「密室遊魚(インドアフィッシュ)」を使用した。結果的に彼は念魚に貪り食われて死亡するが、あのクロロがわざわざ能力を使って応戦したという事実こそ、彼の戦闘能力の高さを裏付けている。
クロロの動きを視認できる動体視力、幻影旅団の団長を前にしても気圧されない胆力。彼が念能力者だったかどうかは作中で明言されていないが、ファンの間で長年議論されるのも納得の強者感だ。
記憶に新しいところでは、2022年の「M-1グランプリ」決勝で、お笑い芸人の真空ジェシカがこのシーンをパロディ化し、再び注目を集めた。名前も正体も不明なままであったが、それでも「強すぎるモブキャラ」として語り継がれる、まさに名キャラクターである。
『HUNTER×HUNTER』には、短い出番であっさりと退場したキャラが無数に存在するが、その中にはたしかな実力が感じられる者もいた。作品を読み返すたびに新たな発見をもたらし、その魅力は尽きることがないのである。
冨樫氏の原稿完成報告により、新たな展開への期待が膨らむ今、過去のキャラクターたちの活躍を振り返るのもまた、一興ではないだろうか。


