「最強の斬魄刀は?」——この問いは、久保帯人氏が描く『BLEACH』を愛するファンの間で交わされ続ける永遠のテーマだろう。死神たちが己の魂を写し取った唯一無二のパートナーである「斬魄刀」。そして、その究極の解放形態である「卍解」は、時に戦局を根底からくつがえしうる絶対的な力を持つ。それゆえに「最強」の座を巡る議論は、物語が完結した今なお熱く繰り広げられているのである。
今回は、作中でも別格の威容を誇る3つの斬魄刀に焦点を当て、それぞれの観点から「最強の斬魄刀」を探ってみたい。
※本記事には作品の内容を含みます。
■“最古”が誇る規格外の殲滅力…山本元柳斎重國「流刃若火」
護廷十三隊総隊長として、千年以上にわたって尸魂界に君臨してきた山本元柳斎重國。彼が携える焱熱系最強、さらには最古の斬魄刀と言われる「流刃若火」は、最強候補の筆頭であることは間違いない。
まず、始解の段階で、あらゆるものを消し炭へと変える圧倒的な火力を誇る。だが、その真の恐ろしさは、卍解「残火の太刀」に至って完成する。
能力は東西南北の四方向に分かれ、触れたものを存在ごと消滅させる東「旭日刃」、1500万度の熱を身にまとい近接戦闘そのものを無力化する西「残日獄衣」、討ち取った亡者の軍勢を軀として呼び起こす南「火火十万億死大葬陣」、そして一閃で対象を灰燼に帰す北「天地灰尽」がある。そのいずれもが、まさに必殺級の性能を持つ。
複数の卍解を運用しているに等しいその能力は、純粋な戦闘力に加え、多くの局面に対応できるバランス面においても「最強」にふさわしいといえるだろう。
実際、作中で彼と相対したボスキャラ、藍染惣右介とユーハバッハは、いずれも正面からの戦闘を避けている。藍染は真正面からの戦闘を回避するため、改造破面(アランカル)のワンダーワイス・マルジェラを用意し、その力を封じる策を取った。
また、ユーハバッハも、まずは「貴方自身(ジ・ユアセルフ)」の能力を持つ“R”のロイド・ロイドを差し向け、最初から直接相対することを回避した。
作中屈指の規格外の力を持つ2人がそろって「真っ向勝負」を放棄したという事実こそが、この流刃若火が最強であることの何よりの証明ではないだろうか。
■“氷の華”の散りゆく先は…日番谷冬獅郎「氷輪丸」
山本元柳斎重國の「流刃若火」に対し、真正面から対抗し得る可能性を秘めた斬魄刀があるとすれば、それは日番谷冬獅郎の「氷輪丸」をおいて他にないだろう。
作中での派手な敗北の印象から、冬獅郎の実力は過小評価されがちである。加えて、卍解「大紅蓮氷輪丸」には「背後の氷の花弁がすべて砕け散った時点で卍解が解除される」という設定が示されており、長らくそれが「時間制限」という弱点であるかのように語られてきた。だが、これこそが読者に対する最大級のミスリードであったことが、物語終盤で明かされる。
実は、あの氷の華が散りゆくカウントダウンは、卍解が解ける合図ではなく、氷輪丸が「真の完成」を迎えるための準備期間であったのだ。成人の姿となって現れた冬獅郎が振るう氷輪丸は、極めて単純かつ凶悪である。
「四界氷結」は、大紅蓮氷輪丸を解放して四歩のうちに踏みしめた空間の地水火風、そのすべてを凍結させる。ジェラルド・ヴァルキリー戦で語られたこの説明が真実であれば、あの流刃若火すらも凍らせることになる。
成田良悟氏によるノベライズ『BLEACH Can’t Fear Your Own World』において、京楽春水は当面の次期候補として朽木白哉の名を挙げている。しかし、それはあくまで現時点での力量や政治的背景を考慮したものだろう。筆者個人としては、その先の100年、200年後に真の総隊長として護廷を背負って立つのは、やはり冬獅郎なのだろうと考える。
かつて元柳斎の流刃若火がそうであったように、総隊長となった冬獅郎の氷輪丸が、尸魂界全体を静寂の凍土へと変えるほどの力を振るう……。そんな未来への期待も込めて、この刀を最強候補の一角に据えたい。


