特撮ヒーロー番組の金字塔である『仮面ライダー』シリーズ。その長い歴史の中で、物語の最後に立ちはだかる「ラスボス」は、作品の評価や視聴者に与えるインパクトにも影響する、極めて重要な存在だ。
今回注目したいのは、「お笑い芸人」によるラスボス役である。ふだんはお茶の間に笑いを届ける彼らだが、スクリーンの中でひとたび悪へと転じたとき、そこにあるのは単なる意外性だけではない。独特の個性と表現力が生み出す、強烈な「強者感」であった。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■死刑囚から王へ覚醒「仮面ライダーアーク」堀内健
まず紹介したいのが、2008年公開の『劇場版 仮面ライダーキバ 魔界城の王』で、「仮面ライダーアーク」に変身する杉村隆を演じた堀内健さんである。
彼が演じる杉村は、22年間まったく容姿が変わらないまま刑務所に収監されている死刑囚。幾度もの死刑執行を生き延びてきたという、異様な男である。
物語冒頭、脱獄に成功した彼は、ゴミ捨て場に無気力に倒れ込んでいたかと思えば、一変して暴れ回り女性を人質に取る凶悪性を見せる。
その一方で、怪人の出現に失禁するほどの臆病さを見せるなど、その振る舞いは終始不安定だ。この「何をしでかすか分からない」という杉村の危うさは、予測不能な芸風を持つ堀内だからこそ生み出せたものだろう。
しかし、彼が怪人「レジェンドルガ」の王・ロードとして覚醒した瞬間、空気は一変する。玉座に鎮座し、圧倒的な強者として配下を従える堀内の佇まいは、まさに「王」そのもの。さらに変身を遂げれば、全高約3.2メートルという規格外の巨躯を誇る仮面ライダーアークとして立ちはだかる。
まさに劇場版のラスボスにふさわしい不気味さと、圧倒的なスケール感に満ちたラスボスだった。
■低音ボイスで君臨するルネサンスの怪人…「ダヴィンチ眼魔」ケンドーコバヤシ
続いては、2015年公開の『仮面ライダー×仮面ライダー ゴースト&ドライブ 超MOVIE大戦ジェネシス』に登場したケンドーコバヤシさんだ。
彼が演じたのは、レオナルド・ダ・ヴィンチの力を宿す最強の眼魔「ダヴィンチ眼魔」。ラファエロ、ミケランジェロの名を冠した眼魔を従え、本映画における怪人軍団の頂点に立つ存在である。
本作での出演は声のみであったが、ハリウッド大作『パシフィック・リム』での怪演や、最近では『呪術廻戦』でのケンさん役など、その渋みを帯びたバリトンボイスはプロの声優陣からも一目置かれている。
劇中、仮面ライダーゴーストと仮面ライダードライブを相手取り、重く響く低音ボイスと、彼らを見下ろすように放たれる冷酷な言葉の数々は、まさにラスボスにふさわしい威厳に満ちていた。
ちなみに、彼に従うラファエロ眼魔とミケランジェロ眼魔を、シソンヌのじろうさんと長谷川忍さんがそれぞれ担当している。さすがは演技力に定評のあるコンビで、こちらも実に見事な怪人ぶりを見せている。
本作の怪人は本職の声優にも引けを取らない、実力派芸人による圧巻の悪役トリオであった。


