■涙なしでは見られない…初めて実感する喪失感『違国日記』

 そして最後に紹介したいのが、ヤマシタトモコさんの同名漫画を原作とし、“今期覇権”の呼び声も高い『違国日記』のエピソードだ。

 本作は人見知りの小説家・高代槙生と、不慮の事故で両親を亡くした姪の田汲朝による同居生活が描かれている。巧みなレトリックやアニメならではの演出、リアルな人間ドラマは視聴者からも好評で、今期放送中の新作アニメの中でも断トツの評価を得ている作品だ。

 第1話から第7話にかけ、槙生と朝、そして彼女たちの周囲の人物が「近いようで遠い他人同士」の狭間で何を思い、何を言葉にするかが丁寧に描かれていたが、大きな進展があったのが第8話だった。

 これまで、両親を亡くしながら、取り乱したり悲しみにふけったりすることのなかった朝。生前の母の日記に記された自分に対する愛情の言葉さえ受け入れられず、作中で何度か「ムカつく」「ズルい」といった言葉を口にするなど、複雑な感情をいだいている様子だった。

 そして、迎えた第8話の終盤、「人を亡くす悲しみがわからない」と語っていた槙生が書いた“小説のある一節”を読んだ朝は、突然感情があふれ出す。

 その小説には、大切な人の死がもたらす行き場のない怒りや悲しみといった、果てしなく続く感情の連鎖が刻銘に綴られており、これまで両親の喪失という事実をうまく受け入れることができなかった朝は、「お父さんとお母さん、死んじゃった」と号泣。それを優しく抱きしめる槙生の姿で締めくくられた。

 SNSでは「ボロボロ泣いた」「家族の死ってすぐには受けとめられないんだよ…」と、初めて両親の死を実感した朝の姿と、身内の喪失を受容する過程の描写に共感の声が集まった。

 価値観も性格もまったく異なる槙生と朝に小さな変化が訪れ、今後、どのような関係を築いていくのか。終盤に向けた物語の行方を丁寧に見届けたい。

 

 冬アニメも終盤戦を迎え、物語はいよいよ核心へと近づく。ここまで積み重ねてきた人間ドラマや伏線がどのように収束していくのか、クライマックスの先に訪れるであろう着地点に注目が集まる。

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