漫画の実写化作品がヒットするか否かは、ストーリーや設定の忠実度はもちろんのこと、キャラクターに命を吹き込む演者がどれだけ原作のイメージと重なり合うかにもかかっている。
特に少女漫画は、登場人物のちょっとした表情や佇まい、話し方といった繊細なニュアンスが物語の魅力を大きく左右するため、完璧なイメージの再現が難しいジャンルの一つだ。さらには原作ファンの思い入れも強い分、実写化へのハードルも自然と高くなる。
それでも、1990年代から2000年代前半にかけては高いハードルを乗り越え、原作のイメージを損なうことなくドラマならではの世界観を確立し、原作ファンのみならず幅広い視聴者の心を掴んだ女優たちがいた。
そこで今回は、懐かしの少女漫画実写化ドラマで少女漫画の世界観を現実に引き寄せ、輝きを放っていた女優たちを複数回に渡って振り返っていく。
(第5回/全5回)
■圧倒的なビジュアル再現度の高さで魅了した『NANA』中島美嘉さん
2000年から『りぼん』で連載されていた矢沢あいさんの『NANA』。新幹線の中で偶然出会い、同じ名前という共通点から親しくなっていく天真爛漫な「小松奈々」とミュージシャンを目指す「大崎ナナ」を軸に展開する友情や恋を描いた物語で、累計発行部数5000万部超えのヒットを記録した人気漫画だ。
2009年より連載が止まっているため現在も完結はしていないが、2005年と2006年の二度にわたり実写映画化されている。そんな『NANA』実写映画において、圧倒的なビジュアル再現度で観客の心を掴んだのが大崎ナナを演じた中島美嘉さんだ。
大崎ナナは、黒を基調にしたパンクロックなファッション、シャープな顔立ちにクールなメイク、そしてヴィヴィアン・ウエストウッドのアクセサリーを身につけるという、いわゆるカッコイイ女性像を体現したような外見の女性である。
一方で内面には脆い一面も持っており、そんな反する要素が多くの読者からの人気を集めていた。だからこそ実写化はハードルが高いのだが、中島さんにしか表現できないだろうと思わせるほど、見事な完成度でナナ役を務めた。
華奢な体つきにシャープな顔立ち、どこか憂いを帯びた眼差しとクールな表情の持ち主な中島さん。普段からステージでキリッとした濃い目のメイクをしていることも多く、放たれる空気感も原作のナナと自然に重なっていた。キャスト発表時に「イメージぴったり」という声が相次いだが、それも頷ける外見のシンクロ率の高さである。
とはいえ、ナナとの親和性の高さはビジュアルだけではない。中島さんが女優と歌手の顔を持つマルチなアーティストだからこそ、ナナの繊細な人間性までも再現できたのだ。
中島さんは、2001年にドラマ『傷だらけのラブソング』で主演に抜擢され、同作の主題歌「STARS」で同時に歌手としてもデビュー。楽曲はオリコン3位のヒットを記録し、本作で歌手としても女優としても注目を集める存在となる。
そこから一気に人気歌手になると、幾多のヒットソングをリリースしながら映画『偶然にも最悪な少年』やドラマ『私立探偵 濱マイク』などにも出演し、女優としても爪痕を残していった。ゆえに、歌手を目指す大崎ナナは中島さんにとって親和性の高い役だったのである。
さらに劇中では、NANA starring MIKAとして主題歌『GLAMOROUS SKY』を歌いオリコン1位を獲得。歌を通して、完璧に漫画の世界と現実世界を結びつけてみせた。
その結果中島さんは、本作で日本アカデミー賞新人俳優賞及び優秀主演女優賞を受賞する快挙を成し遂げた。アーティストらしい感受性と演技での表現力、そしてビジュアル面の完成度が見事に重なり合った結果だったと言えるだろう。
アーティストと女優の才能を遺憾なく発揮し、二次元の存在だったナナに命を吹き込んだ中島さん。その強い存在感は、今なお多くのファンの心に鮮明に残り続けている。


