■尖りすぎて雷直撃!

 刃牙の父親である範馬勇次郎の日常もまた、ハチャメチャなエピソードに満ちている。バーではスコッチをジョッキで一気飲みしたり、たった一息でタバコを根元まで吸ったりと、そのスケールはハンパではない。

 そんな勇次郎は自然現象すら自力でねじ伏せるほどの自負があり、パンチで地震を止めたかのように見えるシーンもあった。常識では考えられないことだが、彼の絶対的な自信と圧倒的なパワーがあれば不可能ではなさそうに思えてくる。

 中でも特に衝撃的だったのが、雷が直撃するシーンだ。勇次郎が街中を颯爽と歩いていると、突如として彼をめがけて雷が落ちる。周囲には建物があり大勢の人間がいたにもかかわらず、まるで勇次郎をピンポイントに狙ったかのような落雷だった。

 なぜ勇次郎に雷が落ちたのか。その理由は、彼があらゆる意味で“尖っているから”だという。雷は、周辺にあったモノの中で、もっとも尖ったものを選んで落ちたということらしい。

 しかも、勇次郎は約10億ボルトの電撃が直撃しながら、何事もなかったかのように歩き続けた。その無敵ぶりには驚きを禁じ得ないが、さすがに若干焦げていたので思わず笑ってしまった。

■勝負の締めくくりがエア夜食

 勇次郎と刃牙が繰り広げた「地上最強の親子喧嘩」は、一般人も大勢見学に駆けつける大騒動となった。

 この戦いで刃牙は、これまで積み上げてきた技と力のすべてを父・勇次郎にぶつける。勇次郎はそれを正面から受けとめ、息子の成長をどこかうれしそうに感じているようだった。

 それまでの殺し合うような戦いとは違い、これは親子喧嘩にすぎない。やがて立てなくなった刃牙に対し、勇次郎はこれ以上の攻撃は不要と判断し、その場を去ろうとする。

 しかし、刃牙が必死の抵抗を見せたため、勇次郎は戦いの終わりを教えるためにある行動に出る。それが「エア夜食」だ。

 勇次郎は料理を作る“しぐさ”を始め、手際良くエア味噌汁を完成させると、刃牙に飲むよう勧める。刃牙は礼儀正しくそれを食し、父が自分のために料理を作ってくれたことを喜ぶのだ。

 そのとき誰もが思ったことだろう。「この時間は何なのか」と。

 大勢が見守る中、ゆっくりと親子の時間が流れる。最後に勇次郎は刃牙に「最強」の称号を譲ったが、刃牙はそれを拒否し、親子喧嘩は終幕を迎えた。

 最強同士の親子喧嘩の後にエア夜食で和解するという斬新な締めくくりは、多くの視聴者の心に残ったことだろう。刃牙に「お父さん」と呼ばれ「よしやがれバカ」と返す勇次郎の姿は、ギャップが感じられてかわいかった。

 

 『刃牙』シリーズは真剣バトルの緊張感がすさまじいからこそ、それ以外の場面で脱力させられることでバランスがとれているのかもしれない。配信が始まった新作アニメ『刃牙道』でも、そうした“バトル以外のシーン”に注目してみるのはいかがだろうか。

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