■単なる「石器時代の勇者」ではなかった!? 「オフレッサー」
最後は帝国軍の上級大将だったオフレッサーを紹介したい。
2メートルの長身を誇り、顔の傷跡が特徴的な巨漢の武人で、装甲擲弾兵総監をつとめた人物。作中で「人をなぐり殺すために生まれてきたような男」などと揶揄され、野蛮な素振りが目立つ男だが、白兵戦においては右に出る者はいない、まさにプロフェッショナルだ。
ラインハルトのことを「金髪のこぞう」と呼び、ラインハルト嫌いの急先鋒として知られ、帝国で起こった内乱「リップシュタット戦役」の際は門閥貴族軍に属してラインハルトと敵対している。
人間離れした白兵戦能力を有し、ロイエンタールやミッターマイヤーですら戦うのを避けたがるほど。個人の戦闘能力だけでいえば、作中最強の存在であろう。
内乱でロイエンタールやミッターマイヤーと直接対峙するが、バカ正直に突進して仕掛けられた落とし穴に落ちるという情けないかたちで捕虜になった。あまりにも知性を感じない彼の言動を見て、呆れた人も多いのではないだろうか。
だが、オフレッサーはラインハルトと同様に下級貴族の出身で、異例の出世を遂げたいわゆる成り上がり者である。ゴールデンバウム王朝では上級貴族の出世は早いが、下級貴族が出世するには相当の功績を挙げる必要がある。
もちろん彼は持ち前の武勇で戦果を挙げたのだろうが、全身傷だらけの彼の姿からは、常に最前線に立って戦い続けてきたことがうかがえる。
ラインハルト陣営に捕縛される際、オフレッサーだけ凶暴な猛獣のような扱いを受けたが、それだけ彼を危険視した証でもある。
加えて、彼は意外にも単なる脳筋キャラではないフシがある。ラインハルトと敵対するヘルマン・フォン・リューネブルクから協力を求められた際、その野心と彼を利用しようとする思惑を見抜き、申し出を拒絶していた。
ラインハルト嫌いで知られるオフレッサーならば、リューネブルクの話に即乗りそうなものだが、「卿も嫌いだ」と一喝したのである。
これはオフレッサーという人物が単なる野蛮人ではなく、意外と他人のことを見ており、政治的な視野も持ち合わせていたことを証明するエピソードといえるだろう。
天才たちの陰で評価を落とし、無能と思われがちな彼らの過去を紐解いていくと、それぞれに誤解されていた部分や、秀でた部分があったことが分かる。そういった点に着目しながら『銀河英雄伝説』を読み返すと、物語をさらに奥深いものとして受けとめることができるのではないだろうか。


