『銀河英雄伝説』過小評価されがちな男たちの「侮れない真価」 パエッタ、ホーランド、オフレッサー…彼らは本当に「無能」だったのかの画像
DVD「アニメ製作20周年記念 銀河英雄伝説 LEGEND BOX」(ハピネット・ピクチャーズ)

 田中芳樹氏による人気SF小説『銀河英雄伝説』を語る際、どうしても話題の中心になりがちなのはラインハルト・フォン・ローエングラムやヤン・ウェンリーといった規格外の天才たちである。

 銀河帝国と自由惑星同盟を代表する傑出した指揮官である彼らのそばには、優秀な人材がそろっていた。もちろん、そういった才能あふれる人物を見出し、適材適所に配置することも名将たるゆえんだ。

 しかし、その陰で「無能」や「凡庸」といったレッテルを貼られがちなキャラクターもいる。物語上、勝者がいれば敗者もいるわけで、敗れた側は無能なかませ犬のように思われることも多い。

 だが、彼らは本当に無能だったのだろうか。

 希代の天才を基準にしてしまうと、常人が評価を落とすのは、ある意味当然ともいえる。特に尺に制限があるアニメ作品では、小説ほど詳細にフォローされないケースもあり、無能な部分がことさら誇張されて、その印象がついてしまうケースも多いように感じる。

 作中では失敗する場面が描かれたが、個人的に「実はこの人、けっこう有能なのでは?」と思うような人物もいる。そこで今回は、実績以上に無能と評価されがちな提督たちの、有能さを感じた側面について探っていきたい。

※本記事には作品の内容を含みます。

■無能扱いされがちだが、指揮官としての能力は人並み以上!? 「パエッタ」

 まずは自由惑星同盟軍の第2艦隊の司令官を務めていたパエッタ提督から振り返ってみたい。物語序盤はヤンの直属の上官であり、さまざまな会戦に参加してきたベテラン軍人である。

 アスターテ星域会戦においては敵に2倍する戦力を擁しながら、ヤンの進言を受け入れず、なすすべもなく大敗を喫してしまったパエッタ。同じようにアスターテ星域会戦で敗れた第4艦隊司令官パストーレ中将、第6艦隊司令官ムーア中将とともに、無能な指揮官という評価を下した人も多いかもしれない。

 だが、この時の相手は若き天才と呼ばれたラインハルトである。

 この会戦でラインハルトがとった各個撃破戦法は、帝国の名将として知られるメルカッツ提督ですら想定しておらず、当初は数の上での劣勢のため、帝国に不利な状況だと認識していたほどだ。

 もう1人の天才であるヤンはラインハルトの狙いを看破していたとはいえ、常識では考えられない奇策だったのは間違いない。

 そんな名の知れた提督でさえ疑問視するような策に対応できなかったからといって、それだけで無能扱いされるのは少々酷というものだろう。

 実際、敗戦の後にパエッタは、第1艦隊の司令官に就任している。第1艦隊は首都星防衛を担う艦隊でもあり、その大役を任されるパエッタが、単なる無能者とは考えづらい。アムリッツァ星域会戦で同盟の名だたる司令官が戦死し、人材が枯渇していたはいえ、同盟軍内でそれなりに評価されていたと考えたほうが自然だ。

 戦術面においても、小説の中で有能な一面が描かれている。特に惑星レグニッツァ上空遭遇戦での艦隊運用は見事だった。

 大気が不安定な雲層におおわれた空域で、パエッタ率いる第2艦隊は、ラインハルトが率いる帝国艦隊と予期せぬ遭遇をしてしまう。双方の艦が混乱する中、パエッタはラインハルト艦隊よりも早く隊列を立て直し、攻撃に転じていた。

 これには部下のヤンも感心しており、経験豊富なベテラン指揮官ならではの手腕を見せた一例といえる。こういった描写を鑑みると、少なくともパエッタは無能と断じるような存在ではなく、むしろ同盟内では有能寄りの提督といえるのではないだろうか。

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