■衝撃2:リアルの競馬にファンが流入?担当声優のニュースも話題に
競馬はもともと幅広い年齢層から支持されていたが、ファンの平均年齢は40歳を越え、男性が多いという傾向があった。しかし『ウマ娘』のリリース後、「競馬=中高年男性のギャンブル」という固定観念をくつがえした。
SNS分析ツール「クイッドモニター」のメディア運営チームが発表した分析データによると、2020年の天皇賞(春)におけるSNS投稿者の性別比率は「男性59%:女性41%」。しかし、『ウマ娘』リリース後の2021年の天皇賞(春)では「女性51%:男性49%」と逆転したという。
またSNSの自己紹介欄に「アニメ」「ゲーム」といった単語を持つユーザーの競馬に対する言及が激増し、競馬に対する興味を持つ若者が急増したことがデータ上にも表れている。
それと同時に20代のJRA(日本中央競馬会)公式サイトへのアクセス数や、「競馬」というワードを検索する数も大幅に増加しており、若年層の競馬への関心が増えていることを顕著に示していた。
また日本競馬と『ウマ娘』が取り上げられる流れに拍車をかけたのが、声優のLynnさんによる「高額配当的中事件」である。2021年4月4日に開催されたG1レース「大阪杯」において、『ウマ娘』でマルゼンスキーの声を務めるLynnさんが、オッズ1062.1倍という三連単馬券を的中させた。
しかも、その勝ち馬となった「レイパパレ」の母系の血統にはLynnさんが声を担当するマルゼンスキーが入っており、現実に起こった数奇なドラマは競馬界の大きなニュースとして取り上げられた。
■衝撃3:競馬場に鳴り響いた『うまぴょい伝説』
2021年のJRAの年間総売上は、3兆911億1202万5800円を記録。当時、コロナ禍で競馬場の入場者数は激減したにもかかわらず、17年ぶりに3兆円の大台を回復した。
JRAの後藤正幸理事長(当時)は、2022年初頭に行われた競馬誌『週刊ギャロップ』のインタビューにて、『ウマ娘』の影響について言及。「ウマ娘という『ゲーム』によって競馬を身近に感じられるチャンスがあったというのは、私たちでは気が付かない点でした」「本当にありがたく思っています」と述べている。
さらに、2021年の有馬記念当日の中山競馬場では、海上自衛隊東京音楽隊が『ウマ娘』の代表曲『うまぴょい伝説』を演奏。スポーツ新聞各紙も『ウマ娘』に触れるなど、競馬界全体がこのコンテンツを「文化的なパートナー」として認めるような象徴的な出来事となった。
『ウマ娘』のリリース後、牧場見学のマナー徹底を呼びかけるガイドラインが発出されたり、競走馬の慰霊碑への献花を巡って論争が巻き起こったりと、急速な人気拡大ゆえの摩擦も生じている。しかし、『ウマ娘』が競馬界に大きな功績をもたらしたのは、JRAの後藤理事長の言葉からも間違いないだろう。
2021年の『ウマ娘』リリース以降、JRAの売上は好調を維持しており、2025年6月に英語版がリリースされると、こちらも大ヒット。海外の『ウマ娘』ファンも多数生み出している。
競馬場に足を運ぶ若いファン、引退馬に想いを寄せる支援者、そしてゲームアプリの開発者。彼らのまなざしの先には、常に日本競馬と実在馬たちへの深い愛と敬意がある。バーチャルとリアルが手を取り合った『ウマ娘』の衝撃は、これからも競馬文化を支え続ける大きな財産となることだろう。


