2021年2月24日、日本のエンターテインメント史に深く刻まれる「蹄音」が響き渡った。スマートフォン向けゲームアプリ『ウマ娘 プリティーダービー』(以下『ウマ娘』)のリリースである。
同じ時期にテレビアニメ『ウマ娘 プリティーダービー Season2』も放映され、ゲームは大ヒットを記録。2021年は、日本のApp Store、Google PlayのDLランキング、売上ランキングともに1位に輝いた。
今年2026年で5周年を迎えた『ウマ娘』だが、この作品は単なるヒット作の枠を超え、業界全体を巻き込むほどの社会現象を巻き起こしたタイトルである。
そこで本記事では『ウマ娘』がどのようなコンテンツなのかおさらいしつつ、リリース直後から起こった主要なトピックスを振り返っていきたい。
■競馬の史実がベースに…単なるかわいいキャラだけのゲームではない?
『ウマ娘 プリティーダービー』のことをよく知らない人に説明すると、同作はCygamesが手がけるクロスメディアコンテンツである。ゲームだけでなく、アニメ、漫画、動画、音楽など、幅広いジャンルにて展開されている。
そしてタイトルに「ウマ」や「ダービー」というワードが入っていることから分かるとおり、モチーフになっているのは「競馬」だ。かつて競馬場を沸かせた実在の競走馬たちの名前と魂を受け継ぎ、馬の耳と尻尾を持つ少女「ウマ娘」たちが、仲間やライバルとして切磋琢磨する世界を描いている。
単に実在する競走馬をかわいく擬人化しただけでなく、主軸となるストーリーは競走馬の史実を基に構成されている。劇中で描かれるライバル関係や復活劇、涙を誘う名勝負の数々はフィクションではなく、実際に現実の競馬場で起こったリアルな出来事なのである。
『ウマ娘』をきっかけに、「ここまでドラマチックな話が現実に存在するのか」と衝撃を受け、当時のレース映像を見返した人も少なくないはず。
創作だと思っていた名シーンが、実際にレース映像として残っている……その驚きの体験こそが、『ウマ娘』というコンテンツの持つ魅力の源泉かもしれない。
■衝撃1:ナイスネイチャが起こした引退馬支援の奇跡
『ウマ娘』のリリース初年度、最も社会的なインパクトが大きかったのは、引退馬支援に対する爆発的な関心の高まりである。
ゲームに登場する大半のウマ娘は実在する競走馬であり、中には牧場で穏やかな余生を過ごしている馬もいる。そんな引退馬に対し、バースデードネーションというかたちで寄付を行う動きがあった。
そのドネーションで集まった額は『ウマ娘』の影響で激増。その象徴ともなったのが、かつて「3年連続有馬記念3着」という珍記録で多くの競馬ファンから愛された名馬・ナイスネイチャである。
ウマ娘としても登場するナイスネイチャは、ゲーム内で高い人気を誇る。そして2021年4月、引退馬支援団体「引退馬協会」がナイスネイチャの33歳の誕生日に合わせて「バースデードネーション」を募ると、前代未聞の寄付が寄せられた。
2020年の寄付額は約176万円だったが、『ウマ娘』がリリースされた2021年は開始直後から寄付が殺到。最終的に約3582万円が集まり、金額ベースで前年の約20倍という驚異的な伸びを記録した。
また、現役時代3着が多かったナイスネイチャが33歳ということで、「3」という数字にちなんで「3000円」や「3333円」の寄付が多数寄せられたという。
これまで日本では災害支援以外の寄付文化が定着しにくいとされてきたが、キャラクターへの愛着(推し活)を実在馬の支援へと昇華させる、これまでにない社会貢献のかたちを提示したといえるだろう。


