■福田が見せた一瞬の安堵、勝負を分けた桜木の集中

 インターハイ出場の切符をかけた決勝リーグ最終戦。湘北の相手は、直近の練習試合で敗れた陵南だった。

 試合は終盤までもつれ、湘北がリードするも陵南は強烈な猛追を見せる。対する湘北も副キャプテン・木暮公延が値千金の3Pシュートを決めるなど、最後まで結末の分からない極限の展開となった。

 スコアは「68対66」で湘北リード。赤木が追加点を狙い、ゴール下で陵南キャプテン・魚住純を交わしてシュートを放つ。だが、これを福田吉兆が魂のシュートブロック。動揺を誘われた赤木のシュートは、無情にもリングに弾かれてしまう。

 この時点で残り9秒。後半に入ってからのエース・仙道のキレと集中力を考えれば、逆転のチャンスは十分にあった。陵南ベンチは逆転への期待に沸き、決定的な守備を見せた福田の口元にも一瞬の安堵の笑みが浮かんだ。

 しかし、その陵南の勝利の望みは、桜木によって打ち砕かれる。リングを弾いたボールを空中で掴んだ彼は、そのままダンクを叩き込んだのだ。

 だが、今の湘北メンバーに油断はなかった。ダンクを決めた桜木自身が「戻れっ!!」「センドーが狙ってくるぞ!!」と叫び、湘北メンバーは自陣へと駆け出す。

 かつての練習試合で仙道に逆転速攻を許した苦い記憶。さらには、海南にあと一歩で敗れた悔しさ。あの日味わった絶望を誰よりも知る男たちは、歓喜に浸ることなくすぐさま守備体制を整えて陵南の最後の攻撃を断ち切り、勝利を掴んだのである。

 

 勝利を確信した瞬間の油断は、時に最大の敵となる。今回振り返った3つの場面はいずれも、「勝った」「成功した」と思った一瞬の隙が勝敗を分けた象徴的なシーンである。しかし、その地獄を知ったからこそ、湘北は同じ過ちを繰り返さなかった。

 『SLAM DUNK』が不朽の名作であり続ける理由は、派手な逆転劇だけにあるのではない。勝利を目前にした一瞬の心の揺らぎ、そこに潜む残酷な現実をリアルに描き切ったからこそ、読者の記憶に深く刻まれているのである。

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