『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(監修:堀井雄二氏、原作:三条陸氏、作画:稲田浩司氏)には、主人公の勇者・ダイたちを苦しめた数多くの強敵が登場する。特に魔王軍には、物語を盛り上げた屈強なキャラクターたちがそろっていた。
大魔王バーンや魔軍司令ハドラーを筆頭に、竜騎将バランや氷炎将軍フレイザードといった「魔王軍六大軍団長」は、いずれも強力な必殺技を持つ猛者ばかりだった。彼らの圧倒的な力の前に、ダイたちは何度も窮地に追い込まれたものである。
ただ、魔王軍の脅威は軍団長クラスの幹部だけではない。ダイたちを翻弄し、勝利寸前にまで追い詰めた「隠れた強敵」たちも存在した。今回は、そんな彼らが持つユニークで強力だった特殊能力に焦点を当て、紹介していこう。
※本記事には作品の内容を含みます
■卓越した頭脳から研究して「超魔生物」を作り上げたザムザ
妖魔士団の軍団長・ザボエラの息子のザムザは、妖魔学士として超魔生物学を研究する卓越した頭脳の持ち主だ。この超魔生物とは、100種類以上のモンスターの長所を合成して生み出される、いわば究極の魔獣である。
彼はその研究を完成させるため、身分を偽ってロモス王国の国王に取り入って武術大会を開催させ、集まった強靭な肉体を持つ人間たちを超魔生物の実験材料にしようと企んでいた。
覇者の剣を求めてロモス王国を訪れたダイたちと対峙したザムザは、強力な呪文・メラゾーマを放つも、竜の紋章の力を解放したダイには通用せず、一方的な攻撃を受けてしまう。
だが、真の恐怖はそのあとにあった。実はザムザは自身の身体をベースに超魔生物への改造を90%ほど完成させており、魔獣へと変身。凄まじいパワーを誇り、どんな攻撃を受けても瞬時に再生する高い治癒能力を持つ、不死身の怪物と化したのだ。
変身後に呪文が使えなくなるという制約はあるが、闘気を飛ばす技や強靱な肉体を活かした肉弾戦で、ダイを圧倒する実力を見せつけた。
だが、この不死身の肉体に唯一対抗できたのが、武闘家になったマァムが身に付けた「閃華裂光拳」だ。回復呪文・ホイミを強化させたマホイミと同じ効果を与えるこの技は、回復効果を促進させ、対象の生体組織を破壊するほどの衝撃を与える。そのため、ザムザの超再生パワーに対しても有効だった。
マァムの閃華裂光拳によりダメージを負ったザムザは、ポップやチウのサポート、そして復活したダイが放った渾身のアバンストラッシュによって敗れた。
超魔生物という特殊能力でダイたちをあと一歩のところまで追い詰めたザムザ。敗れはしたものの、その研究結果は死の間際に父・ザボエラに送られた。これが、後に呪文の使用も可能となる「超魔生物ハドラー」の誕生につながるのだった。
■パワーだけじゃない! 判断力と特殊能力で主君を救ったハドラー親衛騎団のブロック
ザムザの研究成果をもとに、ザボエラはハドラーを超魔生物へと改造する。その功績を認めたバーンは、褒美としてオリハルコンでできたチェスの駒をハドラーに授けた。これを用い、ハドラーは禁呪法で5体の「ハドラー親衛騎団」を生み出す。
その中の1人である城兵(ルック)の駒から生まれたブロックは、大型船を持ち上げて放り投げるほどの怪力を誇る。そのパワーは、獣王クロコダインを圧倒するほどだった。
だが、ブロックの真価はそれだけではない。隙をついてポップが放った極大消滅呪文・メドローアに対し、彼はその巨体と重量を活かして仲間全員を地面に押し込み、直撃を回避させた。鈍そうな見た目とは裏腹に、極めて優れた判断力と機敏さを見せつけたシーンである。
また、ブロックは主君・ハドラーがバーンに反旗を翻した局面でも活躍する。ザボエラに動きを封じられ、バーンにとどめを刺されそうになったハドラー。まさに絶体絶命の瞬間、ブロックの巨大な鎧の体が割れ、中から細身の本体が現れた。
次の瞬間、彼はハドラーと一瞬で位置を入れ替え、主君を安全な結界内に移動させた。一方、身代わりとなったブロックはバーンの攻撃を急所である核(コア)に受け、爆死してしまう。
この能力は、チェスのルールにある「キャスリング(王と城の駒の位置を入れ替える手)」というものだった。バーンに「本来はチェックメイト後のキャスリングは反則」と言わしめるほど驚異的だったこの一手は、ブロックの主君に対する深い忠誠心を示すとともに、彼の図抜けた判断力と素晴らしい特殊能力を印象づけた。


