昭和の『ウルトラマン』シリーズで真っ先に思いつく怪獣といえば、多くの人が「バルタン星人」と答えるのではないだろうか。
誰もが真似をした「フォッフォッフォッ」という特徴的な笑い声、セミのような顔と覚えやすいネーミング、そしてトレードマークの巨大なハサミ。昭和の時代を過ごした人たちにとって、知名度抜群の人気怪獣である。
現在ではキャラクターとしても愛される存在となっているため、中には「コミカルな怪獣」というイメージを持つ人もいるかもしれない。だが、放送当時の子どもたちにとっては、かなり怖い存在だったものだ。
今回は、そんな昭和『ウルトラマン』シリーズに登場したバルタン星人の「忘れられない戦慄シーン」を振り返っていきたい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■仮死状態にされた人間たち…回転する黄色い目が不気味だった「初代バルタン星人」
初登場は『ウルトラマン』第2話「侵略者を撃て」。住んでいた惑星が核実験で滅びたため、バルタン星人たちは宇宙船での放浪の末、地球にたどり着く。当初は宇宙船の修理をするために立ち寄ったというが、地球の環境を気に入り、そのまま移住を企てる。
科学センターに出現した彼らは、警備員や駆け付けた科学特捜隊のアラシ隊員をハサミから放つ光線で仮死状態にする。「フォッフォッフォッ……」という笑い声とともに、黄色の目玉がぎょろぎょろと回転する様子は、今見ても不気味だ。
その後、ハヤタ隊員とイデ隊員が深夜のビルに潜入すると、そこにはうつろな表情で硬直した警備員の姿が……。正気を失った表情は非常に恐ろしいのだが、ただ、コミカルな動きをするイデ隊員のおかげでいくぶん恐怖が和らいだものである。
その後、地球の言葉が分からないバルタン星人は、アラシ隊員の身体を乗っ取ってハヤタ隊員とイデ隊員に話しかけてくる。淡々とした感情のない無機質な声は、宇宙人に憑依される様子をリアルに演出していた。
バルタン星人は、“宇宙船にはバクテリアほどの大きさになって眠る20億3000万ほどの同胞がいる”と明かす。これほどの数が一斉に移住してくれば、地球は混乱に陥ることは想像に難くない。町中のいたるところであの笑い声とともにハサミを振りかざされたら、たまったものではないだろう。
その直後、バルタン星人はアラシ隊員から抜け出し、人間サイズから一気に巨大化。圧倒的な力を見せつけるも、最終的にウルトラマンの必殺技「スペシウム光線」を浴びて敗れた。
見た目の恐ろしさはもちろん、人間を仮死状態にしたり、身体を乗っ取ったりする特殊能力は、当時視聴していた子どもたちの心に強烈なインパクトを残したものだ。
■無数のミニバルタン星人が飛び出す衝撃…トラウマ必至の「二代目」
バルタン星人が次に登場したのは『ウルトラマン』第16話「科特隊宇宙へ」だ。ここでは、「二代目」のバルタン星人として紹介する。前回の戦いでウルトラマンによって宇宙船は破壊されたが、実はまだ生き残りがいたのである。
彼らはR惑星という移住先を見つけたものの、地球侵略とウルトラマンへの復讐を諦めてはおらず、有人金星探査ロケットに乗船していた毛利博士に憑依する。画面いっぱいに映し出される博士の顔とバルタン星人の目がグルグルと回転する描写は、当時の子どもたちを戦慄させた。
恐ろしいのは彼らの狡猾さだ。博士に憑依したバルタン星人はエネルギー不足を装って救助を要請し、ムラマツキャップら科学特捜隊を地球から誘い出す。その隙を突き、彼らは謎の青い球体を地球へ向けて発射する。
実はこの球体には、無数の「ミニバルタン星人」が潜んでおり、地球侵略を狙っていた。博士に憑依したバルタン星人は、救助へ来た科学特捜隊をR惑星にまで誘導し、襲撃する。侵略の障害となるウルトラマンは1人しかいないため、地球と宇宙の両方を同時には守れないだろうという策略だったのだ。
地球へ到達した球体から何十体ものミニバルタン星人がわらわらと飛び出したり、逆に球体に集結したりする様子は、まるで大量の虫の群れのようで非常に気味が悪い。当時の少年少女たちは度肝を抜かれたはずだ。見る人によっては、もはやトラウマシーンとなっただろう。
この描写は今見てもものすごいインパクトがある。これは、当時の特撮技術が優れていたことの裏返しでもあるだろう。
憑依された毛利博士の鬼気迫る表情、救助に向かったはずの科学特捜隊が逆に窮地に陥る展開を含め、心理的にも視覚的にも“怖いバルタン星人”を決定づけたエピソードといえる。


