■可愛らしい題名に隠された戦慄のパニックホラー「妖精を見た!」
最後に紹介するのは、第29話「妖精を見た!」である。「妖精」という言葉からいだくメルヘンなイメージを根底からくつがえす、まさに『アウターゾーン』らしい恐怖が描かれたエピソードだ。
主人公・想一はホラー映画に熱中し、無数の怪物のフィギュアが飾られたホラーショップに通い詰める少年である。ある日、店主のミザリィから、お得意様の彼へ特別に「もし妖精を見つけても、見なかったフリをしなさい」という不吉な忠告が与えられる。
自宅に戻った想一は、鏡越しに小さなゴブリンのような妖精を見つけてしまう。ホラー好きの好奇心から、つい「ちょっとだけ」と視線を向けたのが運の尽き。鬼の形相に豹変した妖精は、「姿ヲ見タ人間ハ許サネェ!!」と叫び、ナイフを手に顔面へ切りかかってくるのである。
翌日、母の外出で1人になった想一に、靴の中に潜んでいた妖精が再び襲いかかる。逃げ場のない室内での絶望的な死闘。想一は決死の覚悟で昆虫採集セットの毒薬を注射し、辛くも妖精を無力化する。その後、トイレに流して一件落着かと思いきや、下水道から這い上がった妖精が怨念を燃やして三度襲来するのだ。この執拗なパニックホラー展開には、思わず手に汗を握ってしまう。
そして絶体絶命の窮地に現れたのは、ミザリィだった。彼女は暴れる妖精をひょいとつかみ上げると、「これはいい商品になりそうだわ」と妖しく微笑み、自身の店へと持ち帰っていく。そして事件後、ミザリィの店には1体の「妖精のはく製」が並ぶのだった。
だが、ここで、ふと疑念がよぎる。あの店に並ぶ無数の不気味なフィギュアたちは、果たして本当にただの人形なのだろうか、と……。不穏な余韻を残したまま、物語は静かに幕を閉じるのだった。
愛する者を失った末の執念、過去から逃れられない因縁、そしてほんの出来心に過ぎない好奇心。いずれも日常にありふれた感情でありながら、本作ではその一つ一つが、容赦のない恐怖へと直結していく。
『アウターゾーン』が今なお「怖すぎて忘れられない」と語り継がれる理由は、怪物や呪いの存在そのもの以上に、人間の普遍的な感情や選択が引き起こす恐怖を描いている点にあるように思う。
ジャンプ黄金期の中で、一際冷たく、しかしどこか美しい異彩を放っていた『アウターゾーン』。久しぶりにページをめくれば、そこには懐かしさ以上に、今だからこそ突き刺さる恐怖が待っているはずだ。


