板垣恵介氏による『刃牙』シリーズは、1991年連載開始の『グラップラー刃牙』(秋田書店)に始まり、『バキ』『範馬刃牙』『刃牙道』『バキ道』『刃牙らへん』と、現在も連載が続く長寿シリーズである。
作中には多種多様な格闘家が登場し、我こそが最強だと信じて疑わない男たちが異種格闘技戦を繰り広げる。しかし、その自信は範馬勇次郎という絶対的な存在を前にしては、いともたやすくへし折られてしまう。シリーズを通して「地上最強の生物」である勇次郎の地位が揺らぐことはない。
それでは、勇次郎を除外した場合は誰が最強なのだろうか。総合力で考えれば、やはり勇次郎の息子である範馬刃牙だろう。地上最強の親子喧嘩を繰り広げた彼は、父を納得させるだけの実力を見せつけていた。
しかし、特定の分野に絞って見てみると、その序列も変わってくるかもしれない。そこで今回はさまざまなカテゴリーにおける、本作の「最強」について考察していく。
※本記事には作品の内容を含みます。
■力での最強は?
闘争に必要なのは技なのか、それとも力なのか。これは『刃牙』シリーズにおける重要なテーマの1つである。勇次郎は、幾度となく圧倒的な力で相手をねじ伏せてきた、“力こそ全て”というタイプだ。一方で刃牙は、自身の体格や筋力を踏まえ、技を磨く道を選んできた。
力という分野において、作中で負け知らずの勇次郎は殿堂入りで間違いない。では、その勇次郎を除いての最強は誰かというと、ピクルではないだろうか。
「史上最強」とも評されるピクルは、はるか昔、恐竜の時代を生き抜いてきた存在だ。自分よりも何倍も巨大な恐竜を腕力のみで倒し、捕食するという驚異的な生活を送っていた。
紆余曲折の末、現代に蘇った直後には、捕獲を試みたアメリカ軍の特殊な戦闘機を玩具のように破壊。路上でトラックにはねられても平然としていたどころか、そのトラックを軽々と潰してしまった。
勇次郎もピクルの野生の力に興味を示して手合わせをしたが、あまりの力の強さに、思わず“技術”を使って受け流している。このことからも、ピクルの腕力が規格外であることがうかがえる。
勇次郎とピクルは本気で力比べをしたわけではないので、純粋な腕力勝負の結果は分からない。しかし、ピクルが力において他のキャラクターを圧倒しているのはたしかだろう。
■必殺技での最強は?
次に、必殺技という観点から見ていこう。『刃牙』シリーズには、長年の鍛錬の末に生み出された結晶のような、オリジナルの必殺技が数多く登場する。
刃牙は、「剛体術」「鞭打」「蜚蠊(ゴキブリ)ダッシュ」「トリケラトプス拳」「虎王」など、多彩な技を持つ。その引き出しの多さは、さすが主人公といえるだろう。必殺技という点では、間違いなく刃牙は最強候補の1人だ。
他のキャラで選ぶとしたら、愚地克巳と郭海皇の2人だろう。克巳は、もともと使用していた「マッハ突き」を郭海皇の助言によって昇華させ、広範囲に衝撃波を生み出す「真マッハ突き」を完成させる。この技を受けたピクルは、克巳の強さを認めて心からの敬意を示した。
郭海皇の必殺技は、全身の力を脱力させることで防御にも攻撃にも転用できる「消力(シャオリー)」だ。防御においてはあらゆる攻撃を無効化し、攻撃に転じれば拳でコンクリートの壁を叩き割るほどの破壊力を持つ。この技をフル活用して勇次郎と殴り合った事実が、その凄まじさを物語っている。
この2人を比較すると、やはり郭海皇に軍配が上がるだろう。消力はリスクなく、いかなる状況でも繰り出せる。対して克巳の真マッハ突きは、本気で放つと反動で自らの肉が削げ落ちてしまう。ピクルとの戦いでは、この技を使用した代償として右腕を失ってしまった。
克巳の技の破壊力は凄まじいが、その犠牲の大きさを考えると、必殺技では郭海皇が最強といえる。


