「何を使った?」爪やハンガー、氷を用いた緻密なトリックに驚愕…『名探偵コナン』コナンが苦労した「消えた凶器」の画像
DVD『名探偵コナン1時間SPコレクション vol.02』(c)青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996

 四半世紀を超えて愛され続ける国民的漫画『名探偵コナン』(青山剛昌氏)。作中で描かれるあまたの難事件の中でも、特に本作のトリックの幅広さを象徴するのが、現場から忽然と姿を消した「凶器」を巡る謎だろう。

 本来、現場にあるはずの凶器が見つからない——この不可解な状況は、犯人の執念が生み出した巧妙なトリックである場合もあれば、まったくの偶然が招いた想定外の産物であることも。

 今回は、数あるエピソードの中から特に印象深い「消えた凶器」にスポットを当て、驚きの真相が隠された3つの事件を紹介したい。

 

※本記事には作品の核心部分の内容を含みます。

 

■美しき指先に隠された凶器「アイドル達の秘密」

 まずは「アイドル達の秘密」(原作コミックス32巻、アニメ第249話・第250話)から。このエピソードで描かれたのは、女性の美しさの象徴ともいえる「体の一部」を凶器へと変貌させた戦慄のトリックであった。

 物語は、女優・草野薫と俳優・剣崎修の婚約パーティーから始まる。アイドル・沖野ヨーコに同行し、毛利小五郎、毛利蘭、江戸川コナンも参加していた。

 華やかな芸能人たちが集う幸福な空間は、浴室で血を流して倒れる薫が発見されたことで一変してしまう。不可解なことに彼女の首元には明確な切り傷があるにもかかわらず、凶器らしき刃物は現場のどこにも見当たらなかった。

 犯人は薫の友人でタレントの岳野ユキ。彼女が凶器として用いたのは、刃物ではなく、なんと自分自身の「爪」であった。

 ユキはあらかじめ鋭く研ぎ澄ませた親指の爪で犯行に及び、その後、血の付いた部分を噛み切って短く整え、証拠を隠滅。その上からつけ爪を装着することで、凶器そのものを体の一部として隠し、警察の所持品検査さえもすり抜けてみせたのだ。

 事件の真相は、あまりにも皮肉なすれ違いであった。別の男性に発破をかけるために薫が剣崎と仕組んだ「偽装婚約」を、ユキは真に受けて凶行に及んでしまったのである。

 幸いにも病院に搬送された薫は一命を取りとめるが、真相が明らかになり追い詰められたユキは薬を仰ぎ自殺を図る。だが、その命はコナンによって救われ、被害者の薫も友人・ユキを庇い、警察に突き出すことはしなかった。

 芸能界という嫉妬や愛憎が渦巻く世界で生きる彼女たち。しかし2人の間にあった絆が、悲劇的な結末にかすかな救いをもたらしたといえるだろう。

■犯人以外が運び去った想定外の行方「消えた凶器捜索事件」

 次に紹介するのは、アニメオリジナル回である第135話「消えた凶器捜索事件」。この事件は、犯人による入念な隠蔽とはまったく異なる“想定外の要因”により凶器が消えてしまった異色のエピソードである。

 事件の舞台は、美容師・三井美香の自宅マンション。招かれた少年探偵団が彼女の部屋を訪れると、そこで首を絞められ窒息死している美香の姿を発見する。

 犯人は、美香が勤める美容院の店長・五島緑。他店にスカウトされていた人気美容師の美香を引きとめようとする中で起きた、身勝手な犯行だった。

 緑が絞殺に使用した凶器は、クリーニング済みの洋服に付いていた使い捨ての「針金ハンガー」であった。コナンはハンガーが凶器だと目星をつけ、ゴミとして回収された可能性を疑う。しかし、警察がゴミ収集車をくまなく調べても、ハンガーは見つからない。

 その理由は、人間の想定を超えたところにあった。ゴミとして捨てられた凶器のハンガーであったが、なんと「カラス」によって巣作りの材料として持ち去られ、巣の一部と化していたのである。人為的なトリックではなく、動物の習性が生み出した凶器消失という展開は、さすがのコナンにとっても予想外であったに違いない。

 最終的に、少年探偵団の懸命の捜索によってハンガーでできたカラスの巣が発見され、事件は無事に解決へと向かう。緻密さではなく偶然が生んだ「消えた凶器」。本作ならではのユニークな発想が印象に残るエピソードであった。

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