実写化作品の成否を分ける要素は多々あるが、素晴らしいコスチュームが完成した時点で、すでに大きなハードルをひとつ越えていると言っても過言ではない。キャラクターが画面に姿を現した瞬間、観る者の目を奪うことができるか。その第一印象が、作品への没入度を大きく左右するのである。
原作を知っているファンであればあるほど、衣装の再現度に注目するのは当然だろう。色合いやシルエット、全体の印象がわずかに違うだけで違和感を抱くこともある一方、俳優の持つ雰囲気や動きと衣装がぴたりと噛み合った瞬間には、理屈を超えた説得力が生まれる。衣装とは、キャラクターに命を吹き込み、その存在を観る者に“信じさせる”ための大切なスイッチなのだ。
今回は、魅惑的なコスチュームによってキャラクターの魅力を最大限に引き出し、「実写化」を成功に導いた女優たちをピックアップ。シリーズで彼女たちの圧倒的な存在感と印象的な着こなしを振り返っていきたい。
※本記事には各作品の内容を含みます
(第1回/全5回)
■伝説のアイドルのカリスマ性を体現…齋藤飛鳥さん『【推しの子】』星野アイ
赤坂アカさん原作、横槍メンゴさん作画による漫画『【推しの子】』は、芸能界の華やかな表舞台とその裏側に潜む闇を描き、絶大な人気を誇る作品だ。アニメ化も大きな話題を呼んだ本作だが、2024年に実写化された際も、そのキャスティングと再現度をめぐって多くの注目が集まった。
とりわけ大きな話題となったのが、“伝説のアイドル”星野アイの配役だ。物語の核を担う最重要キャラクターであり、その存在感が作品全体の印象を左右すると言っても過言ではない。
この難役に抜擢されたのが、2022年に乃木坂46を卒業したばかりの齋藤飛鳥さんであった。意外性のあるキャスティングに驚いたファンも少なくなかったが、実は齋藤さん自身がこのオファーを一度は辞退していたという。この事実からも、本役が彼女にとっていかに覚悟を要する挑戦であったかがうかがえる。
しかし、映像の中で齋藤さん演じるアイは、その登場だけで空気を一変させた。特に印象的なのが、アイドルグループ「B小町」のセンターとして身にまとうステージ衣装である。原作漫画に忠実な鮮やかなピンクを基調とし、黄色いアクセントが効いたフリルたっぷりのドレス。物語冒頭、無数のペンライトが揺れるライブ会場に登場した瞬間、「本物の星野アイだ!」と直感させるほどの説得力に満ちていた。
ロングスカートやワンピースといった比較的落ち着いた衣装が多かった乃木坂46時代と比べると、B小町のステージ衣装はフリルを多用した濃いカラーリングの、極めて華やかなデザインである。にもかかわらず、齋藤さんは衣装の派手さに負けることなく、見事に着こなしていた。彼女の小顔でバランスの取れたスタイルに加え、独特の透明感、そして乃木坂46時代に培ったステージパフォーマンスが融合し、画面の空気を一気に支配していた。
劇中では、ステージ衣装以外の服装も効果的に使われていた。自身の子どもである双子のアクアとルビーと暮らす日常シーンで見せるTシャツやトレーナー、スウェットパンツといったラフな服装は、ステージ上とのギャップを際立たせた。
作中のアイは、ステージ上では「みんな愛してるよー!」とファンに笑顔をふりまく完璧なアイドルでありながら、その裏では深い孤独と不安を抱えた人物でもある。齋藤さんは、その繊細な二面性を表情や視線のわずかな揺らぎで丁寧に表現していた。そして物語は、“あの”衝撃的なシーンに向かう——。
コスチュームの力と、齋藤さん自身の表現が見事に融合した時、スクリーンには確かに伝説のアイドル・星野アイが存在していた。本作における彼女の好演は、魅惑のコスチュームが実写化にもたらす力をはっきりと示した好例と言えるだろう。


