スーパー戦隊休止に振り返る…特撮界の女王・曽我町子が示した「圧倒的悪役像」と「偉大なる功績」【昭和オタクは燃え尽きない】の画像
「太陽戦隊サンバルカン DVD-COLLECTION VOL.1」(東映ビデオ) (C)東映

 2026年2月8日の放送をもって、1975年の『秘密戦隊ゴレンジャー』から半世紀以上も続いた「スーパー戦隊シリーズ」が“休止”。多くの戦隊ファンから嘆きの声があがっています。

 2月15日から同番組枠では、『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ』の放送が始まり、こちらは1982年放送の『宇宙刑事ギャバン』が原点。「スーパー戦隊シリーズ」「宇宙刑事シリーズ」のどちらも、昭和に生まれた人気特撮シリーズでした。

 そんな昭和の特撮界に、単なる悪役女優という枠を超え、作品の魅力を一段階引き上げる唯一無二の存在がいました。テレビに姿を現せば子どもたちの視線を集め、圧倒的な威厳とどこか憎めない愛嬌を併せ持つ“特撮界の女王"と呼ばれた女優こそが「曽我町子さん」です。

 「ヘドリアン女王」「魔女バンドーラ」といったスーパー戦隊シリーズにおける伝説的なキャラクターを通じ、彼女が我々に見せてくれたのは威厳に満ちた恐怖だけではなく、時代を超えて愛され続ける「悪の美学」でした。

 一方、曽我さんは声優としても人気を博し、特徴的な声色や歌声でもファンを魅了しました。

 幅広い活動の中で演じた、あまたのキャラクターと真摯に向き合い、命を吹き込んできた曽我さん。今もなお多くのファンを惹きつけてやまない「プロ意識」の塊でもあった彼女に、当時リアルタイムでくぎ付けになった筆者が当時の思い出を振り返りたいと思います。

※本記事には、各作品の核心部分の内容も含みます。

■昭和スーパー戦隊で示した「ヘドリアン女王」と「魔女バンドーラ」の圧倒的存在感

 昭和の特撮番組で強烈な悪のヒロインを演じてきた曽我町子さんの代名詞ともいえる“女王”が、テレビのブラウン管に姿を現したのは、1980年(昭和55年)2月2日のこと。

 曽我さんは『電子戦隊デンジマン』の敵である「ベーダー一族」の指導者に君臨する「ヘドリアン女王」を演じます。しかし、その女王は50年以上の歴史を誇るスーパー戦隊シリーズにおいて、極めて異例な存在でした。

 最終回で大切な同胞をすべて失ったヘドリアン女王は、デンジマンに対し「勝ったと思うなよ!」と言い残して姿を消します。なんとラスボスがヒーローに倒されず、物語が終わったのです。

 彼女の執念は実り、次作『太陽戦隊サンバルカン』(1981年)の第5話にて、北極の氷の中に眠っていたヘドリアン女王が、サンバルカンと敵対する「機械帝国ブラックマグマ」によってメカ心臓を移植されて復活を遂げます。

 そして物語終盤、機械帝国の乗っ取りを画策したヘドリアン女王は、総統を倒して頂点に立ちますが、猜疑心に駆られて腹心まで疑うように……。最後は弱り切ったメカ心臓が耐え切れず、自滅のようなかたちで命を落とします。

 半世紀も続いたスーパー戦隊シリーズで、ヘドリアン女王は「2作品にまたがってレギュラーを務めた敵キャラ」であり、「2作品ともヒーローに倒されなかった」という非常に珍しい悪役だったのです。

 そんなヘドリアン女王といえば、大きな角と大胆に胸元が空いた衣装が印象的。実はこれ、アメリカのマーベル作品『マイティ・ソー』のヴィラン(悪役)である「死の女神ヘラ」のデザインを流用したもの。当時、東映とマーベル社が提携契約を結んでいたことで実現した夢のコラボでした。

 なお、『サンバルカン』に再登場したときは、一転してミラーボールのような個性的な頭部に変貌しており、これまた当時のファンを驚かせました。

 そしてヘドリアン女王と並んで、曽我さんの代名詞ともいえるのが、スーパー戦隊シリーズ第16作『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(1992年)で演じた「魔女バンドーラ」役です。

 圧倒的なカリスマ性を持つバンドーラは恐竜を憎み、その独特な髪形や喜怒哀楽をあらわにする強烈なキャラクター性で、当時の子どもに強烈なインパクトを与えました。

 彼女は心の隙を突く狡猾な手段をとり、感情の起伏が激しいために部下から恐れられる存在。しかしその反面、うれしい時には歌い踊るようなコミカルな面もあって、どこか愛嬌のある“悪役”でした。

 劇中では、わが子を愛するがゆえに歪んでしまった事実が明かされ、最終回では魔力を失った彼女が、部下の生んだ赤ん坊を笑顔で抱く姿にほっこりさせられたファンも多いことでしょう。

 冷酷そうに見えて、愛情が隠しきれない人間くさい部分も持ち合わせたバンドーラは、悪役でありながら、多くの視聴者の心を動かした存在でした。

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