■世界が認めたサイバーパンクの金字塔:ケン・イシイ『Extra』
1995年、日本の音楽シーンのみならず、世界中のアーティストに衝撃を与えたのが、ケン・イシイ氏の楽曲『Extra』のMVである。
監督を務めたのは、映画『AKIRA』(作画監督補)や『魔女の宅急便』(原画)など、数多くの名作に参加している森本晃司氏だ。この映像作品は、当時テクノ・ミュージック界で最先端を走っていたケン・イシイ氏による先鋭的な楽曲と、STUDIO4℃による緻密かつ異質なアニメーションが見事にシンクロした、まさに伝説の1本といえる。
舞台は、肉体と機械が混ざり合うサイバーパンクな近未来都市。疾走感あふれるビートに合わせてキャラクターが躍動する映像は、一度見たら忘れられない強烈なインパクトを放つ。公開から30年以上が経過した今見ても全く古さを感じさせず、むしろ新しさすら覚えるほどだ。
本作がイギリスの「MTV DANCE VIDEO OF THE YEAR」を受賞するという快挙は、世界がその衝撃を認めた証といえる。音を完璧に視覚化した圧倒的なクオリティは、映像表現における1つの到達点と言えるだろう。この研ぎ澄まされた世界観は、現在も多くのアニメーターたちに影響を与え続けている。
■現代の才人が描くポップでエモい「百鬼夜行」:星野源『異世界混合大舞踏会(feat.おばけ)』
最後を締めくくるのは、2022年に発表された、星野源氏の『異世界混合大舞踏会(feat.おばけ)』だ。
本作のMVを手掛けたのは、アニメーターの五十嵐祐貴氏。五十嵐氏といえば『映像研には手を出すな!』や、キャラクターが軽快に踊る『呪術廻戦』第1期のエンディングなど、数々の話題作で圧倒的な実力を見せてきた現代随一のアニメーターである。
そんな彼が描く本作は、人間とお化けが垣根を越えて踊り明かす、どこか妖しくもポップな世界観が魅力。映像内では、メガネ少年の主人公・ゲンや、“袖引き小僧”をはじめとするお化けたちが、楽曲のリズムに乗せてキレのあるダンスを披露する。
この振り付けを担当したのは、世界的なダンサーであり振付師のShingo Okamoto氏。その本格的なダンスと、どこか懐かしさを覚える質感の最新のVFX技術。これらが見事に融合したビジュアルは、あらゆる世代を惹きつけた。
クライマックスでは、かつて少年だったゲンが大人へと成長し、その元へお化けたちが再び現れる。かつてのように共にステップを刻むその姿には、弾けるようなポップさの中に、胸を締め付けるようなエモさがあった。
時代や手法は違っても、名作MVの根底にあるものは変わらない。それは、アニメーターたちが楽曲の「魂」を真っ向から受け止め、最高の映像で答えようとする真剣勝負の熱量だ。
名曲が鳴り響くとき、私たちの心にはこれからも、あの美しくも激しい映像が鮮やかに甦り続けるだろう。


