■感情が蘇った時透無一郎の激昂! 冷徹なセリフにゾクリ

 「始まりの呼吸」と言われている「日の呼吸」の使い手を祖先に持つ、霞柱・時透無一郎。彼は刀を握ってわずか2カ月で柱に昇進した天才剣士である。過去の悲惨な経験から記憶と感情を失っていた彼もまた、静かな怒りを見せた1人だ。

 「刀鍛冶の里編」で上弦の伍・玉壺と対戦した無一郎は、人の命を弄ぶ玉壺の様子に心の底から湧き上がる怒りを覚えていた。

 玉壺の血鬼術「水獄鉢」に囚われ絶体絶命の状態に陥るが、刀鍛冶の子ども・小鉄のアシストもあり脱出する。その際、彼は記憶を全て取り戻し、“痣”を出現させた。
兄・有一郎を鬼に殺され、朽ちていく兄を見ながら抱いた“煮えたぎる怒り”を思い出した無一郎は覚醒。完全体となった玉壺をも圧倒し、「霞の呼吸 漆ノ型 朧」で鮮やかにとどめを刺す。

 そして、頸を斬られてもなお見苦しく恨み言を吐き続ける玉壺に対し、無一郎は冷めた視線で「もういいからさ 早く地獄に行ってくれないかな」と言い放ち、完膚なきまでに切り刻むのであった。

 頸を落とせばいずれ消滅する鬼だが、人間を罵倒し自身を高尚な存在だと宣う玉壺の戯言が、聞くに耐えなかったのだろう。年端も行かぬ少年が顔色ひとつ変えずに吐き捨てた静かな一言は、読者の背筋を凍らせるほどの説得力に満ちていた。

■無惨すらも驚いた執念…笑顔に隠された産屋敷耀哉の怒り

 無惨すらも驚愕する怒りを見せたのが、お館様こと産屋敷耀哉だった。鬼殺隊の当主として頂点に君臨する耀哉は、卓越した先見の明によって鬼殺隊を統率し、無惨討伐に全身全霊を注いできた。

 代々当主が短命の運命を辿る産屋敷家だが、耀哉も例外ではなく、次第に病状は悪化し床に臥せるようになっていた。

 そんな彼が最期に企てた計画には、凄まじい怒りが込められていた。「柱稽古編」のクライマックスで、無惨を産屋敷邸までおびき寄せた耀哉。千年の歴史の中で、当主と無惨が直接対面したのは初めての出来事であった。

 無惨と対峙した耀哉は彼を迎え入れ、余命いくばくもない弱々しい姿で普段と変わらぬ穏やかな様子で淡々と語りかける。産屋敷家と無惨の血筋が同じであることを明かし、彼らが歩んできた過酷な運命や、人の想いや命の尊さを説いた。

 そして耀哉は、耀哉は、自分自身と妻、そして2人の娘を囮にして、屋敷ごと自爆するという常軌を逸した計画を実行する。意表を突かれた無惨は重傷を負いながらも、耀哉の行動に驚愕していた。

 罠であると見抜いていた無惨だったが、自爆までは予測が及ばず、耀哉の腹の中に燻る怒りの大きさに驚きを隠せなかった。

 この時、無惨は「私への怒りと憎しみが蝮(まむし)のように 真っ黒な腹の中で蜷局(とぐろ)を巻いていた」「あれだけの殺意をあの若さで見事に隠し抜いたことは驚嘆に値する」と語っている。

 あの無惨さえも感心させる様は、さすがはお館様たる所以であろう。短命と言う運命を背負いながら、鬼を滅するためだけに命を燃やした耀哉の静かな怒りは、多くの人の心に残る作中屈指の名シーンとなっている。

 

 炭治郎が見せた意外な怒りから、産屋敷耀哉の常軌を逸した怒りまで、さまざまな怒りが描かれている『鬼滅の刃』。命を懸けて戦う鬼殺隊だからこそ、鬼への憎しみは深く、見た目からはうかがい知れないほど煮えたぎる怒りを内に秘めているのである。

 劇場版三部作において、彼らの戦いはいよいよ最終局面を迎えている。怒りを原動力に彼らがどのように無惨に立ち向かうのか、ぜひ最後まで見届けたいと思う。

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