■地獄がまるで温泉旅行? 異色のハッピーエンド『鬼をおがんだおばあさん』
地獄や鬼が出てくる恐ろしいようなエピソードでも、最後はほっこりする話もある。それが『鬼をおがんだおばあさん』だ。
ある村に住むおばあさんは、仏様ではなく「鬼」を信仰するという風変わりな人だった。病気で亡くなったおばあさんはその後地獄へ行くのだが、そこにいた鬼たちは“いつも自分たちを拝んでくれるありがたい存在”としておばあさんをもてなす。
しかし、生前に神仏を拝んでいなかったおばあさんは閻魔大王から地獄行きを命じられ、“釜茹で”や“舌抜き”の刑を命じられる。それでも鬼たちがこっそり釜茹での湯をぬるま湯に変え、舌抜きの代わりに虫歯を抜いてくれたおかげで助かるのだ。
最終的におばあさんは快適な地獄を気に入り、「針の山に住みたい」と言いだす始末。その発言に呆れて困った閻魔大王は、最終的におばあさんを極楽へと追い出してしまうのであった。
おばあさんが極楽に行く姿を見て、鬼たちが寂しがり涙する描写も実に印象的だ。人間のたくましさとユーモアに満ちた、救いのあるエピソードであった。
■あまりにもありえない死に方をしたカラスの話『大からす』
あまりのシュールさで視聴者を呆然とさせたのが、熊本県に伝わる『大からす』である。
ある日、鉄砲をかついだ男が巨大なカラスと出会う。男は大カラスの要求に応じて鉄砲で撃ち落とすが、大カラスの死体は見当たらない。その夜、男のもとに胸に風穴を開けた大カラスが現れ、傷口を見せつけながら「ちっとばかし痛かった、今度は俺がお前を撃つ番だ」と迫った。
慌てた男は弾の入っていない鉄砲を大カラスに渡し、空砲に撃たれた男は死んだふりをする。大カラスは男の体に空いたであろう穴を探し続け、最後は男のふんどしの中まで覗き込む。すると男はくすぐったさのあまり、特大の“屁”をした。
するとその翌朝、外に大カラスの死体が転がっていた。心臓を鉄砲で撃ち抜かれても平気だった大カラスが、たった一発のおならが原因で絶命してしまったのである。
本作は人間と同じ大きさほどの巨大カラスが登場し、撃たれて体に穴の空いた胸を見せつけるなど、ホラーのような展開を見せる。しかし最後は、“おならで絶命”という意外な結末で幕を閉じるという落差。
物語の最後も、“男はなぜか訳も分からず寂しい想いがして、その場でいつまでも立ち尽くしていた”というシュールながらもどこかもの悲しいナレーションで終わっている。
このように『まんが日本昔ばなし』には、思わず「なんじゃそりゃ!」と突っ込みたくなるような突拍子もない結末を迎える話も少なくない。
しかし、そんな現実離れした話が視聴者の心を掴み、謎めいた展開だからこそ強く印象に残るのも事実だ。普通の物語とはまた違う不思議な余韻を感じられるのも『まんが日本昔ばなし』の唯一無二の魅力だろう。


