テレビアニメ『機動戦士ガンダム』から続く『ガンダム』シリーズは映像作品だけでなく、漫画やゲームをはじめ、さまざまな媒体で作品が展開されており、そのなかには小説も存在する。
ガンダム作品の小説はアニメ映像をそのままノベライズするのではなく、まったく異なるストーリー展開や設定が追加されているものもあった。
たとえばアニメ監督の富野由悠季氏による小説版『機動戦士ガンダム』では、アニメとは全然違う展開が描かれているのは有名な話。主人公のアムロ・レイは民間人ではなく軍属で、セイラ・マスとの恋模様があったり、彼の最期が描かれていたりと、アムロに関する部分だけでも全然違うストーリーになっていた。
なお、2025年にテレビ放送された『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』は、テレビアニメ『機動戦士ガンダム』以上にシャリア・ブルが重要な役回りを担っており、富野氏の小説版のシャリアから着想を得ていることが鶴巻和哉監督の口から語られている。
そこで今回はガンダム作品のアニメと小説版で、大きく異なる部分が存在する作品を紹介していきたい。
※本記事には、各作品の核心部分の内容も含みます。
■『逆襲のシャア』の初期稿をベースにノベライズした『ベルトーチカ・チルドレン』
小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』は、同劇場版の監督を務めた富野由悠季氏が、映画脚本の初期稿をもとに小説化したもの。
『逆襲のシャア』については、雑誌『アニメージュ』で連載された映画の前日譚ともいえる『ハイ・ストリーマー』もあるが、そちらと比べて『ベルトーチカ・チルドレン』は映画との設定の違いが多く、いわばパラレルワールド的な扱いになっている。
ただし、『逆襲のシャア』の後の時代を富野由悠季氏が描いた小説『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は、『ベルトーチカ・チルドレン』の物語を引き継いでいるのが特徴だ。
『ベルトーチカ・チルドレン』は、『逆襲のシャア』の初期稿がベースということもあって大きな流れは変わらない。最大の違いはアムロの恋人がチェーン・アギではなく、ベルトーチカ・イルマという点にある。それも作品タイトルから分かるとおり、ベルトーチカはアムロの子を宿すことになるのだ。
劇場アニメに登場したチェーン・アギは小説版には登場せず、その役割をベルトーチカが担当。彼女の妊娠を知ったアムロは、シャアとの最終決戦前に「ぼくにはベルトーチカとお腹の赤ちゃんがいる。この違いは絶対的な力だ」と語る場面もあった。
そして物語の最終局面で、地球に向かって落下していた小惑星「アクシズ」は、無数の光によって落下を免れた。小説版では、アムロの乗るνガンダムを中心にこの光が発現しており、その不思議な現象について「サイコ・フレームが共振したのかもしれない。ベルトーチカのお腹の赤ちゃんが呼んだのかもしれない」と解説されている。
■映画『閃光のハサウェイ』も話題…『ベルトーチカ・チルドレン』で悲しき運命を背負うことになった少年
小説『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の主人公ハサウェイ・ノアも『ベルトーチカ・チルドレン』の中で、映画『逆襲のシャア』とは異なる展開を迎えている。
ハサウェイが心惹かれたニュータイプの少女「クェス・パラヤ」が目の前で命を落とすのは、映画も小説も同じ。しかし、アニメではチェーンがクェスを撃ったのに対し、小説版では殺すつもりはなかったとはいえ、ハサウェイ自らがクェスを撃ってしまう。
小説版『閃光のハサウェイ』は、この『ベルトーチカ・チルドレン』の展開を継承。ハサウェイが彼女を殺めた事実について「ハサウェイに絶望だけを残した」と書かれており、その後、彼は精神を病んでしまう。
その治療のため地球に降りたハサウェイは、反連邦組織「マフティー・ナビーユ・エリン」の創始者クワック・サルヴァーと出会い、その思想に傾倒していくことになる。
しかし、マフティーにどれだけ崇高な志があったとしても世間からすればテロリストに過ぎない。そのリーダーとなるハサウェイの内面には、小説『ベルトーチカ・チルドレン』で起こった悲しすぎる出来事が尾を引いていたのだろう。
なお、現在公開中の映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は、劇場アニメ『逆襲のシャア』からつながっているため、クェスの死の要因などは小説『ベルトーチカ・チルドレン』とは異なっている。


