1月16日から放送開始された、大人気テレビアニメ『葬送のフリーレン』の第2期。エルフの魔法使い・フリーレンが歩む新たな旅路に、多くの視聴者が熱い視線を注いでいる。
放送前からファンの大きな期待を集めていたのが、「黄金郷編」だ。本作の核である「時間の重み」や「誰かと積み重ねた記憶」がより強調された原作屈指の人気エピソードではあるが、そのボリュームゆえに、今期で描き切るのか、あるいは劇場版として独立させる展開があるのか、今のところは不明である。
ともあれ、2期でも作品のテーマ性はそのまま変わらず、観る者の心を深く揺さぶるのは間違いないだろう。
■『葬送のフリーレン』が現代人に刺さるワケとは?
それにしても、なぜこれほどまでに本作は胸に響くのか。その理由のひとつは、現代人がかつてないほど「時間」に追われる「タイパ(タイムパフォーマンス)」重視の世の中に生きているからかもしれない。
世の中を見渡せば動画の倍速視聴が当たり前となり、すぐ見終わるショート動画が人気を博している。「3か月でマスターする」「10分でわかる」などといった言葉が飛び交い、短時間で「正解」や「結果」を手にすることが正義とされている。
そんな毎日の中で疲れを感じている現代人にとって、フリーレンが物語の序盤で放った「たった10年一緒に旅をしただけ」という言葉は、あまりに価値観が異なり、浮世離れしたものに聞こえるだろう。
フリーレンは旅を続けるうちに「無駄に思える時間」の中にこそ、人生で一番大切なものが隠れていたことに気づいていく。ヒンメルたち勇者一行と一緒にいた時間は、フリーレンの長い一生から見れば、わずか1パーセントにも満たない。だが、その「たった10年」の記憶が彼女の考え方を変え、その後も数百年続くであろう人生の指針を決めることになった。
現代人がタイパを気にして削り落としている時間の中には、実はフリーレンがのちに愛おしんだ「人生を彩るちょっとした思い出」も含まれているのではないだろうか。
■何気ない時間を味わうことの大切さ
また、フリーレンは自分の人生をかけた趣味として、「かき氷を作る魔法」「背中の痒い部分を掻く魔法」といった、役立つ場面が限られそうな魔法を集め続けている。戦闘を主とする魔法使いの視点で考えると価値はゼロに近いといえるが、そうやって「自分がただ好きなだけのこと」に心を注ぐ時間は、余裕を失わないための大切な癒しのひとときとなりそうだ。
エルフは人間よりずっと長く生きるが、むしろ時間が無限にあるように思えるからこそ、「今、この瞬間」の重みを見逃してしまう。ヒンメルの死後、フリーレンが「なんでもっと知ろうと思わなかったんだろう」と涙を流したのは、「人間の寿命は短い」という事実を知識では知っていても、自分事としての実感を伴って向き合えていなかったからだ。
一方、現代を生きる我々はこれとは正反対の危うさを抱えている。常に「時間がない」と焦り、数秒の動画広告ですら「待つのは損だ」と感じ、時間に追われながら「今」を使い潰す。時間の進み方こそ違えど、その中にあるかけがえのない価値を見落しがちな点においては、似通っているのかもしれない。
では、この作品からどのような「タイパ時代の心の整え方」のヒントが得られるだろうか。まず提案したいのは、フリーレンのように長い目で物事を見つめ直すことだ。もちろん数百年とはいかなくても、「人生におけるたった数か月の出来事」と少し遠くから眺めるだけで、目の前のストレスは多少は軽くなる。
また、何かの成果を得るために費やした時間と同じくらい、他愛もない趣味の時間を大切にしてみるのはどうだろう。それはフリーレンの魔法集めと同様に、自分らしさを守るための大事な拠り所となり得るはずだ。
人生という旅路において、時間をどのように使うのが幸せなのか。フリーレンの足跡は、「心の豊かさ」を取り戻すための道標となってくれるに違いない。


