■ケンシロウにも止められなかった…ユウの父親の心臓を破裂させた「激振孔」
本物のトキが病人やけが人を治療したことで「奇跡の村」と呼ばれるようになった村がある。その噂を聞きつけ、病に侵されて半年間も高熱が続いて衰弱した少年・ユウを救うべく、両親が偽トキ(アミバ)の元へ駆けつけた。
しかし、すでに手遅れの状態だったユウは、アミバの秘孔で命を絶たれてしまう。「安らかに死なせてやっただけ!」とうそぶくアミバだが、その真実をケンシロウに明かされると激怒した父親が隠し持ったナイフで襲いかかった。
だが、その攻撃はいとも簡単にかわされ、腕から肩にかけて「激振孔」という秘孔を突かれてしまう。この秘孔は心臓の運動を急激に増加させ、血管を内側から破裂させる効果を持つ。
北斗神拳の伝承者であるケンシロウですら、これを止める術が見当たらず、ユウの父親は命を落としてしまった。使い方こそ凶悪だが、この秘孔を発見したアミバは相当凄い。もし加減ができるなら、心肺停止からの蘇生や心臓機能の改善に応用できる可能性も秘めているからだ。
使い方や考え方は許されるものではないが、その着眼点はまさに天才的である。
■まるで時限爆弾…ゲルツを突いた「三日で死ぬ」秘孔
「奇跡の村」の生き残りでもある怪力の男・ゲルツ(名前はアニメ版より)が、ある店で「おれは もう どうせ死ぬんだ 今日までの命なんだ」とまくし立てて暴れていた。そこに偶然居合わせたのが、ガソリンと食料を交換するために立ち寄ったケンシロウだった。
ケンシロウが彼の秘孔を突いて動きを止めると、ゲルツはそれをトキの「奇跡」と勘違いし、急におとなしくなる。
ゲルツが暴れていたのは、偽トキ(アミバ)に「三日で死ぬ」秘孔を突かれ、その日を迎えていたからであった。すると彼の言葉通り、ケンシロウの目の前で顎が裂け、無残な姿で息絶える。
これは、死のタイミングをまるで時限爆弾のように正確にコントロールする恐ろしい秘孔だ。そういえば、ケンシロウの「北斗残悔拳」(指を抜いてから3秒で死ぬ)や、シンに与えた1分の時間の猶予など、北斗神拳には同様に時間を操る技がある。
作中では、ラオウがレイに秘孔「新血愁」を突き、同じように3日間の命を宣告する場面もあった。暗殺拳でもある北斗神拳には、アリバイ工作すら可能にするような、相手の寿命をコントロールする技術があるのだろう。
ケンシロウやラオウは作中でも最強クラスの存在で、北斗神拳を極めた猛者である。彼らがこれらの秘孔を使ってもそれほど驚かないが、自己流で北斗神拳をかじった程度のアミバが“三日間の命”などと言い、時間をコントロールしたのは驚嘆に値する。やはり、彼は本物の天才だったのかもしれない。
非人道的な人体実験を繰り返しながら、秘孔究明のために研究を続けたアミバ。しかし、彼の研究は常に成功したわけではない。たとえば、元ボクサーでヘビー級のチャンプにまでなった男に対し、パンチのスピードを倍にする秘孔を試したが失敗。その男は肩から首が破壊され、絶命してしまった。
また「奇跡の村」で足を痛めた老人を治療しようとして、逆に苦痛を与える秘孔を突いてしまい、「ん!?」「まちがったかな……」と顎に手を当てて首をかしげるポーズを取っている。これは彼の象徴的なシーンであり、もはや伝説だろう。
失敗を恐れず、躊躇しないで行動するのは、ある意味天才の証といえるのかもしれない。だが、その結果として「奇跡の村」で生き残った人たちに実験を繰り返し、村は死に絶えたのだから、やはりとんでもない悪党だったのは間違いない。


