■桜木の「左手はそえるだけ」2万本の努力が生んだ、必然の逆転シュート
最後に紹介したいのは、伝説のラストシーンにつながる伏線だ。それは、素人・桜木花道が本物のバスケットマンへと成長を遂げるための試練、安西先生との「2万本シュート合宿」である。
第194話「合宿」で桜木に課せられたのは、ゴール下以外の得点パターンを身につけるための地道で過酷な「1週間で2万本」の練習ノルマだった。
それまでの桜木の武器は、ダンクやレイアップシュートといったゴール下のシュートのみ。安西先生はミドルレンジからのジャンプシュート習得の重要性を説き、「ワクワクしてこないかね」と期待を込める。来る日も来る日も朝から晩までシュートを打ち続けた努力の積み重ねが、山王戦でのあのラストプレイにつながる布石となったのである。
残り時間わずか、1点ビハインドの絶体絶命の状況。流川がゴール下へ切り込み、ディフェンスが彼に集中したその時、視線の先にいたのは桜木だった。その場所は、合宿で繰り返し、体に染み込むまで練習したジャンプシュートのポジションであった。
流川からのパスを受け、桜木が呟いた「左手はそえるだけ……」。ミドルレンジから放たれたボールがリングを通り抜けた瞬間、劇的な逆転ブザービーターが完成した。
直後の桜木と流川「伝説のハイタッチ」は、安西監督が予見した「ワクワク」の終着点であり、積み上げた2万本の努力が報われた最高の伏線回収の瞬間であった。
山王戦における24点差からの大逆転劇は、決して奇跡ではない。湘北メンバーが泥臭く積み重ねてきた努力と絆が、パズルのピースのように噛み合った末に生まれた「必然」の結果だったのである。
流川の覚醒、赤木と三井の揺るぎない信頼、それを万感の思いで見守る木暮。そして、あの2万本の特訓が土壇場で花開いた桜木の努力の結実。今回紹介しきれなかった宮城リョータのポイントガードとしての矜持も含め、山王戦には緻密で情熱的な伏線回収の妙が凝縮されている。
だからこそ『SLAM DUNK』は、連載終了から長い時を経た今もなお、我々の心の中で色褪せることなく鮮烈に輝き続けているのだ。


