今考えると凄すぎる!『SLAM DUNK』山王戦で回収された「過去シーンの伏線」流川の3Pに赤木・三井のスクリーンプレイ、桜木の逆転シュートも…の画像
『THE FIRST SLAM DUNK』(C)I.T.PLANNING,INC.(C)2022 THE FIRST SLAM DUNK Film Partners

 井上雄彦氏による不朽の名作『SLAM DUNK』。そのクライマックスを飾る湘北VS山王工業は、やはり最高だ。

 漫画史に残る最高の名勝負として語り継がれるこの試合は、連載終了から30年近く経った今でも、読み返すたびに「そうだったのか!」という驚きと熱い感動が押し寄せてくる。それは“熱戦だから”というだけでなく、実は物語のあちこちに勝利へとつながる「伏線」がこれでもかと仕掛けられていたことも1つの理由だろう。

 今回は、読者の心を揺さぶる緻密な山王戦の伏線回収に注目。湘北メンバーが歩んできた道のりが、どのようにして最高のドラマに結実したのかを振り返ってみたい。

 

※本記事には作品の核心部分の内容を含みます

 

■流川の「1つ忘れてるぜ」仙道に刻まれた屈辱を沢北に返した3Pシュート

 湘北エース・流川楓は、バスケットボールに関しては誰よりも貪欲だ。コート上で受けた屈辱は、必ずコート上で晴らさねば気が済まない。そんな“不屈の負けず嫌い”である彼の執念が昇華された伏線回収が、山王戦のクライマックス目前で描かれた。

 振り返りたいのは、神奈川県予選の決勝リーグ最終戦、陵南との試合である。後半、湘北は一時は15点ものリードを奪い、試合を優位に進める。しかし、ここから天才・仙道彰を中心とした陵南の猛烈な反撃が始まるのだ。

 第178話「仙道 ON FIRE」。仙道の鋭いドライブを警戒する流川に対し、仙道はあざ笑うかのように意表を突く3Pを沈めてみせた。この時、流川が心の中で呟いた「3点(スリーポイント)だと——!?」という言葉には、完璧に虚を突かれた驚きと屈辱がにじんでいた。

 そして舞台は運命の山王戦へ。後半開始直後、最大24点差(36対60)という絶望的なビハインドから、湘北は驚異的な追い上げを見せる。

 そして試合終盤、第265話「指図」にて、流川は現役高校No.1プレイヤーの沢北栄治に向かって「1つ忘れてるぜ」と言い放ち、自ら3Pを沈めてみせたのだ。それは、かつて仙道にやられたプレイとまったく同じ状況でのリベンジであった。

 追われる側から追う側へと立場こそ逆ではあるが、エース同士の直接対決、大量得点差から猛追する展開、さらには、右45度からのシュートという構図までもが、陵南戦のあの場面と見事に重なっている。

 「1つ忘れてるぜ」というセリフは、沢北に向けた強烈な宣戦布告であると同時に、あの日、仙道にやられた「借り」を流川が最高の舞台で清算した瞬間だった。

■赤木・三井、そして木暮…遠回りした3年生の思いが重なった最高のチームプレイ

 山王戦後半、湘北主将・赤木剛憲は最強のセンター・河田雅史を前に己の無力さを痛感していた。しかし、ライバル・魚住純からの「泥にまみれろよ」という言葉で覚醒。ついに「主役」へのこだわりを捨て、チームのために体を張る道を選ぶ。

 そんな赤木が、チームを救う見せ場を作ったのは第247話「譲れない」でのこと。山王の徹底マークに苦しむ三井寿をフリーにするため、自らの体を壁にする渾身のスクリーンを仕掛けたのである。

 このプレイこそ、湘北バスケ部が3年間、あるいは三井不在の2年間をかけて積み上げてきた、壮大な物語の「伏線回収」といえる瞬間だった。

 中学MVPの肩書きを持つ三井と全国制覇を夢見る赤木は、1年生の時に互いを認めず、激しく衝突した。三井の挫折と離脱、バスケ部襲撃事件という険しい空白期間を経て、2人はようやく同じ目標のために戦う仲間となったのである。

 赤木からの「行けっ!!」というアイコンタクトを受けてフリーとなった三井は、その信頼に応えるように美しい放物線を描く3Pを沈める。かつては交わることのなかった2つの才能が、この土壇場で「信頼の連携」として実を結んだのだ。

 このプレイ後、「ゴツッ」という重いグータッチを交わした赤木と三井。その光景をベンチで見守る副主将・木暮公延が漏らした「……2年間も待たせやがって……」というひと言には、同じ歳月を歩んだ彼にしか分からない万感の思いが込められていた。

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