■窮地に立たされ独自の呼吸を生み出した…竈門炭治郎
最後に、主人公である竈門炭治郎の底力についてもご紹介しよう。炭治郎は代々炭焼きを生業にしてきた竈門家の長男で、呼吸を使用する剣士の末裔ではない。
しかし、彼の祖先は「始まりの呼吸」の剣士と深い所縁があり、炭治郎が耳につけている花札のような文様の耳飾りは、その剣士が着けていたものと同一のデザインである。
過去に「始まりの呼吸」の剣士と交流があったとされる竈門家だが、炭治郎もそのことと無関係とは思えない底力を見せていた。
それは「那田蜘蛛山」での戦いの時のこと。今までの鬼とは一線を画する下弦の伍・累と対峙した炭治郎は、圧倒的な強さを前に死を覚悟する。その時、走馬灯のように脳裏に蘇ったのが、亡き父・竈門炭十郎が舞う「神楽」だった。
炭焼きを生業とする竈門家には、仕事の安全と無病息災を祈り、年始に“ヒノカミ様”へ神楽を奉納する伝統があった。病弱であった父・炭十郎が凍てつく寒さの中でも一晩中舞い続けることができたのは、この神楽に隠された特殊な呼吸のおかげであった。
炭十郎は特殊な呼吸があることを炭治郎に伝えており、その呼吸を使うことができれば一晩中神楽を舞っても疲れず、寒さもなくなると言うのだ。
炭治郎は窮地の中、父の記憶からヒントを得て、それまで習得していた「水の呼吸」に応用する形で、新たに「ヒノカミ神楽」という独自の呼吸を生み出すことに成功。その後、格上の鬼であった累を圧倒する力を発揮した。
アニメでは「ヒノカミ神楽」を繰り出す際、口から炎を吐き出すようなエフェクトが加わり、舞のように華麗な剣技として描かれ、視聴者の目を釘付けにした。
普通の剣士が血の滲むような努力をして習得する呼吸を土壇場で自ら生み出してしまう才能は、主人公ならではのポテンシャルの高さと言えるだろう。
こうして「呼吸」の使い手の末裔たちの活躍を振り返ってみると、彼らが生まれ持った素質の高さと、それを開花させるための凄まじい努力が見て取れる。
たった2カ月で柱になった天才、独学で道を切り開いた努力家、はたまた窮地で新たな力を生み出した主人公……。彼らのようなチート級の才能を持つ剣士たちの存在が、『鬼滅の刃』という物語をより面白くしていることは間違いない。


