吾峠呼世晴氏による漫画『鬼滅の刃』は、2020年に『週刊少年ジャンプ』(集英社)での連載が完結してからも、その人気はとどまるところを知らず、今や日本を代表する作品の1つとなっている。特に劇場版は社会現象ともいえる大ヒットを記録し、数々の記録を塗り替えて日本映画史にその名を刻んだ。
本作は、人間が強大な力を持つ鬼に立ち向かう姿を描いており、手に汗握るアクションも大きな魅力だ。中でも、鬼を狩る剣士たちが使用する特殊な戦闘術「呼吸」は、キャラクターそれぞれの個性を際立たせている。特に、その呼吸を代々受け継いできた末裔たちの実力は作中でも一線を画するものがあった。
そこで今回は、類まれなる才能を持つ「呼吸の使い手の末裔たち」に焦点を当て、彼らの恐るべき底力をご紹介しよう。
※本記事には作品の内容を含みます
■刀を握りわずか2カ月で柱に…日の呼吸の末裔・時透無一郎
鬼殺隊の最高階級である「柱」の1人、霞柱・時透無一郎。彼は14歳という若さで柱に就任している、まさに天才と呼ぶにふさわしい実力者だ。
驚くべきことに、無一郎は刀を握り始めてからわずか2カ月で柱まで上り詰めている。両親を亡くし、双子の兄・時透有一郎と暮らしていたが、鬼の襲来によって兄を殺され、自身も瀕死の重傷を負う。そこを鬼殺隊に保護されたのが、無一郎の壮絶な物語の始まりであった。
無一郎の祖先は、「始まりの呼吸」と呼ばれている「日の呼吸」の剣士である。そんな彼ら兄弟の素質を見込んだ鬼殺隊に勧誘されていたが、有一郎が拒んでいた矢先に起こった悲劇の出来事だった。
兄を失ったショックで記憶と感情を失っていた無一郎だが、やがて主人公・竈門炭治郎と出会い、上弦の伍・玉壺との死闘を経て記憶を取り戻す。同時に、身体能力を飛躍的に向上させる「痣」を発現させ、急成長を見せた。
これまで上弦の鬼を単独で撃破したのは、柱の中でも無一郎だけだ。刀鍛冶の里の少年・小鉄のアシストや、痣の発現という覚醒を経ていたとはいえ、彼の戦闘能力は傑出していると言える。
玉壺が真の姿を見せてからの死闘では、痣が出現した無一郎の圧倒的優勢となり、瞬きする間もなく頸を落とす鮮やかな一撃で戦いに終止符が打たれた。その際、玉壺は地面に頸が落ちる瞬間まで、自分が斬られたことにすら気づいていなかった。それほど見事な神速の斬撃は、まさに「日の呼吸」の末裔といったところだろう。
■上弦の参・猗窩座も惚れ込む実力…炎の呼吸の末裔・煉獄杏寿郎
炎柱・煉獄杏寿郎もまた、代々「炎の呼吸」を受け継ぐ煉獄家の末裔である。彼の父・煉獄槇寿郎も元炎柱で、鬼殺隊の中でも活躍してきた。
偉大な父の背中を見て鍛錬を積んできた杏寿郎だが、ある出来事をきっかけに父が豹変。彼から直接の指導を受けられなくなってしまう。しかし杏寿郎は、煉獄家に伝わるわずか3冊の指南書を熟読し、やがて独学で「炎の呼吸」を極め、柱にまで上り詰めた。
柱になってからも、杏寿郎は“弱き人を助けることは強く生まれた者の責務”という母の教えを胸に、人のために尽くした。無限列車での任務では、下弦の壱・魘夢が多数の乗客を人質に取る状況下の中、1人の死者を出すことなく守り抜いている。
魘夢を撃破した直後、間髪入れずに現れた上弦の参・猗窩座との一騎打ちになった杏寿郎。すでに満身創痍であったにもかかわらず、凄まじい剣技を繰り広げ、その実力に感銘を受けた猗窩座が思わず「お前も鬼にならないか?」と勧誘するほどの戦いぶりを見せた。
劇場版で描かれた2人の死闘は、圧巻の演出で多くの観客を魅了した。人間の身でありながら、鬼である猗窩座の速さに対応する杏寿郎の神速の斬撃は、彼の類いまれなる才能を物語っている。
もしも杏寿郎が万全の体勢だったなら、違った未来があったかもしれない。そんな希望を抱いてしまうほど、彼の底力は凄まじかった。


