■同じ質問を繰り返す恐怖…『牛鬼淵』

 最後は、静かな恐怖が迫り来る『牛鬼淵』を紹介しよう。

 山奥の小屋に寝泊まりして作業していた若い木こりと年寄りの木こりの元に、ある夜、見知らぬ男が訪れて「何しとるんじゃ?」と声をかけてきた。

 年寄りの木こりが“ノコギリの手入れをしている”と答えると、「そのノコギリは木をひくんじゃな?」と続ける男。そこで年寄りの木こりが、ノコギリの最後の刃は「鬼刃(おにば)」という、鬼を退治するためのものであると説明する。それを聞くと、男は闇夜に消えていった。

 次の晩も同じように現れた男は、昨日と全く同じ質問をする。年寄りの木こりもまた、昨日と同じように鬼刃の話をすると、男はまた静かに帰っていった。

 しかしその翌日、作業中にノコギリの鬼刃が欠けてしまう。年寄りの木こりはノコギリを修理するため下山するが、若い木こりは忠告を聞かず、そのまま小屋に残った。

 その晩、案の定、例の男が現れて同じように質問した。すると、若い木こりは正直に、“鬼刃が欠けてしまった”と答えてしまう。それを聞いた男は、みるみるうちに顔が牛、体が鬼の姿をした「牛鬼」へ変身し、若い木こりに襲いかかった。牛鬼に追われた若い木こりは淵へ追い詰められ、結局、そのまま牛鬼に水底へと引きずり込まれてしまう。

 翌朝、山に戻ってきた年寄りの木こりは、淵で若い木こりが着ていた服を見つけて全てを悟り「あれほど鬼刃が欠けたことは言うなと言うとったのに」と、悔しそうに言うのであった……。

 人間に化け、毎晩同じ質問を繰り返す牛鬼の執念深さにゾッとするこのエピソード。鬼を殺す「鬼刃」を気にかけ、好機をじっとうかがう牛鬼の狡猾さ、本性を現したあとの恐ろしい風貌も非常に怖かった。

 「先人の忠告には素直に耳を傾けるべき」という教訓を伝えるこの物語もまた、『まんが日本昔ばなし』を代表する恐怖エピソードの1つといえるだろう。

 

 怨霊、妖怪、そして鬼。さまざまな怪異が描かれる『まんが日本昔ばなし』の怖い話は、ただ視聴者を怖がらせるだけではなく、戒めになるエピソードも多い。大人になって振り返ってみると、子ども時代に見た時とはまた違う、新たな発見や恐怖がそこにはあるはずだ。

 ぜひこの機会に、これらの名作エピソードを振り返ってみてはいかがだろうか。

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