■激情を秘めた犯人役を熱演、season9第9話「予兆」吉田羊

 神戸尊相棒時代のseason9第9話「予兆」は、後の劇場版につながるエピソードである。この回では、今や主演級の活躍を見せる吉田羊さんが、犯人役として高い演技力を披露している。

 このエピソードは神戸が女性の遺体を発見したことから始まるが、事件は単純なものでは済まず、やがて組織が絡む大規模なものへと発展していく。

 被害者の身元は、警察庁長官官房付き総務課に勤務する中路絵利子。彼女は、警視庁警務部所属の警視・藤崎俊孝とある関係を持っており、事件は「警視庁と警察庁の対立」という大きな構図を浮かび上がらせる。

 そして、その中で特命係が出会う警察組織の大物たち。これらが後の劇場版へとつながる、文字通りの“予兆”となっていくのだった。

 しかし、殺人そのものは大きな陰謀によるものではなく、夫の浮気を疑った藤崎の妻による犯行だった。この妻を演じたのが、当時はまだ無名だった吉田羊さんだ。彼女は、夫の前では従順でおとなしい姿を見せながらも、裏で夫の不倫を調査しその相手を殺すほどの激情を隠した女性を熱演した。

 特命係に追及され、涙ながらに犯行の経緯を語る彼女の姿は、鬼気迫るものがある。夫に裏切られた女性の苦悩や二面性を巧みに表現する姿からは、後の主演級女優としてのポテンシャルが垣間見えた。

 

 長年続いてきた『相棒』シリーズには、膨大な数の俳優が出演してきた。中には、出演当時はあまり知られていなくても、今や誰もが知る人気俳優へと成長した者も少なくない。これも長寿ドラマならではの現象といえる。

 今後放送されるであろう新シリーズでも、新たな若手俳優が起用されるだろう。その中から、人気俳優としてスターダムを駆け上がる者が出てくるかもしれない。そうした視点で鑑賞するのも、本シリーズの楽しみ方の1つといえる。

  1. 1
  2. 2
  3. 3