土屋太鳳
土屋太鳳 (写真/ふたまん+)

 近年、漫画や小説の実写化が増えている日本の映像業界。そのなかでもアクション作品は、身体表現のクオリティが求められる分、実写化のハードルがひときわ高いジャンルである。

 原作ファンからの期待が高まる中、作品の完成度を左右するのがキャラクターをどこまで再現できるかという点だ。そしてその鍵を握るのは、やはり俳優の演技力の高さにほかならない。

 そうした難しい条件の中でも、原作さながらの奇抜な衣装に身を包み激しいアクションを体当たりで演じた女優たちはひときわ強い印象を残してきた。単にビジュアルを再現するだけでなく、動きの一つ一つでキャラクターの存在感を示していた点は大きな魅力と言えるだろう。

 そこで今回は、ビジュアルもアクションも一切妥協せずにキャラクターの魅力を体現した、人気女優たちを振り返っていく。

(第5回/全5回)

■身体能力の高さを存分に発揮した土屋太鳳さん『今際の国のアリス』

 体を激しく動かしながら繊細な感情表現をこなし、さらにキャラクターの個性をも際立たせることは、アクションの多い実写化作品において容易なことではない。これを高い水準で成立させるには、俳優の技量と表現力が求められる。

 そうした難易度の高さに挑み続けてきた女優の一人が、土屋太鳳さんだ。そして、そのポテンシャルが最大限に引き出されていた作品が、2020年からNetflixで配信されたドラマ『今際の国のアリス』シリーズである。

 本作は、『週刊少年サンデー超』および『少年サンデー』で2010年から連載されていた麻生羽呂さんの同名漫画を実写化したデス・サバイバルアクション。同時刻にたまたま渋谷に居合わせた有栖良平(山﨑賢人さん)ら民間人が、突如「今際の国」と呼ばれる廃墟と化した世界に迷い込み、命がけのデスゲームに参加させられていくというストーリーだ。

 土屋さんが演じたのは、ヒロインのウサギこと宇佐木柚葉。原作のウサギは、登山家の父とともに山に登ってきた経験を持つ運動能力の高い女性だ。作中では数々の危険な“げえむ”で仲間を鼓舞し、自ら先頭に立って体を張りながらクリアを目指していく。ゆえに実写化にあたっては、演技力に加えてアクションへの適応力が不可欠な役柄だった。

 土屋さんは、シーズン1でのトンネル内全力疾走やマンション鬼ごっこでのクライミング、シーズン2ではキューマらとの戦いで見せたコンテナ間の大ジャンプ、さらにはリサとの対決での肉弾戦まで、あらゆるアクションに果敢に挑んでいる。シリーズを通してとにかく走り、動き続けている印象が強く、それを最後まで貫いている点は素晴らしいの一言だ。

 子どもの頃からダンスが好きで、常に体を動かしてきた土屋さん。卒業した日本女子体育大学では舞踊学を専攻し、人間の身体についても学んできたという。アクション自体は幼少期から好きだったものの、“自分が演じる”ことへの意識を強く持つようになったきっかけは、映画『るろうに剣心』だった。

 作品に衝撃を受けてアクション女優への道を志した土屋さんは、オーディションを経て巻町操役をゲット。過酷なトレーニングを積み重ねてキレのあるアクションを披露し、強い印象を残した。

 その経験が大いに生かされ、『今際の国のアリス』で見せた運動能力は、かつてよりもさらに磨きがかかっている。原作のウサギを、そのまま現実に引き出したかのようなアクティブさだった。

 さらに驚かされるのが、2025年配信のシーズン3にまつわるエピソードである。撮影が始まったのは2023年。土屋さんは同年1月に結婚、8月に第一子を出産し、ライフステージが大きく変化していた。にもかかわらず、産後わずか2か月で本作のためのアクション練習を再開しているのである。

 産後は体の状態も大きく変わり、日常生活だけでも相当な負荷がかかる時期だ。そんな中、簡単な動きを何度も繰り返し基礎からリハビリを重ねてあの完成度にまで仕上げたという事実は、努力を惜しまない土屋さんの根性と強い意志を物語っている。

 アクションに真摯に向き合う土屋さんは、自分を追い込みながら限界に挑み、キャラクターの個性を際立たせることができる女優だ。その努力の積み重ねが作品にも活き、ウサギという存在は『今際の国のアリス』を支える大きな柱となった。

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