近年、漫画や小説の実写化が増えている日本の映像業界。そのなかでもアクション作品は、身体表現のクオリティが求められる分、実写化のハードルがひときわ高いジャンルである。
原作ファンからの期待が高まる中、作品の完成度を左右するのがキャラクターをどこまで再現できるかという点だ。そしてその鍵を握るのは、やはり俳優の演技力の高さにほかならない。
そうした難しい条件の中でも、原作さながらの奇抜な衣装に身を包み激しいアクションを体当たりで演じた女優たちはひときわ強い印象を残してきた。単にビジュアルを再現するだけでなく、動きの一つ一つでキャラクターの存在感を示していた点は大きな魅力と言えるだろう。
そこで今回は、ビジュアルもアクションも一切妥協せずにキャラクターの魅力を体現した、人気女優を振り返っていく。
(第2回/全5回)
■綾瀬はるかさんのガンアクションが炸裂した『リボルバー・リリー』
「アクション女優」と聞いて、多くの人が思い浮かべる女優の一人が綾瀬はるかさんではないだろうか。
2004年に出演したドラマ版『世界の中心で、愛をさけぶ』で一気にブレイクを果たして以来、清楚で親しみやすいヒロイン像を確立してきた綾瀬さん。幅広い役柄に挑む中でさまざまな表現方法を磨き上げ、近年では本格的なアクションにも挑み続けている。
その到達点の一つが、2023年に公開された映画『リボルバー・リリー』である。本作は、長浦京さんによる2016年の同名小説を、『世界の中心で、愛をさけぶ』や『北の零年』などのヒット作を手がけた行定勲監督が実写化した作品だ。
物語の舞台は、大正時代末期の1924年・東京。綾瀬さん演じる“リボルバー・リリー”の異名を持つ元敏腕スパイ・小曾根百合は、裏の世界から身を引き、銘酒屋の女将として静かな生活を送っていた。
しかし、陸軍の莫大な裏金に関する情報を握る少年・慎太の出現によって、百合の日常は一変。反戦主義者である山本五十六に慎太の保護を依頼し、裏金の情報を託すため、追撃してくる陸軍部隊から彼を守りながら山本のいる海軍省へ向かうという命懸けのミッションが幕を開ける。
国の存亡をも左右しかねない壮大なスケールのスパイアクション小説であるだけに、実写化にあたっては孤高の諜報員・百合の存在感や、大正時代の世界観をどこまで再現できるのかが注目された。そうした期待の中で、綾瀬さんはレトロな衣装とヘアスタイルに身を包み、強く美しいスパイとして生きる百合の姿を鮮やかに体現している。
なかでも印象的なのが、軍服姿の敵に囲まれる中、大正時代のトレンドを取り入れた優美なドレス姿で繰り広げられるスタイリッシュなガンアクションだ。S&W M1917リボルバーを構え、鋭い眼差しとクールな仕草で次々と敵を撃ち抜いていく姿は思わず見惚れてしまうほどのかっこよさ。
さらにジェシーさん演じる陸軍大尉・津山との対峙では、壁に頭を打ち付けられ殴り飛ばされるといった臨場感あふれる荒々しい肉弾戦にも挑戦。綾瀬さんはこれまでにも『ICHI』や『奥様は、取り扱い注意』などで殺陣やワイヤーアクションを経験してきたが、『リボルバー・リリー』で見せる肉弾戦とガンアクションは、そうした積み重ねが見事に昇華されたものと言っていいだろう。
次々と展開する激しいアクションの中で、動きの迫力とふと静止した瞬間に見える美しさを同時に成立させている点に、本作ならではの綾瀬さんの存在感が表れている。それは、綾瀬さんが誰よりも真摯にアクションに向き合っていたからに他ならないだろう。
撮影時は、監督からOKが出ても自身が納得できる最高の動きになるまで撮り直しを重ねることもあったという。さらに撮影中は常に青タンができていたというエピソードからも、過酷でシビアな現場に全身全霊で挑んでいたことが伝わってくる。
激しい銃撃戦や肉弾戦の中でも芯がブレず、ふとした瞬間には気品すら漂わせる。そのスタイリッシュで凛とした佇まいは、綾瀬さんだからこそ体現できた百合という人物像なのだろう。『リボルバー・リリー』は、そんな綾瀬さんがアクション女優として確かな進化を遂げたことを強く印象づける作品となった。


