「絶対1話切りできない」2025年放送アニメ 『Turkey!』『永久のユウグレ』『SANDA』など、冒頭から急展開すぎた話題作を回顧の画像
『永久のユウグレ』キービジュアル (C)Project FT/永久のユウグレ製作委員会・MBS

 2025年もまもなく終わりを迎えようとしている。今年のアニメシーンは『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』『劇場版 チェンソーマン レゼ篇』など劇場版の大ヒットに加え、『薬屋のひとりごと』『SPY×FAMILY』『ダンダダン』など人気アニメの続編も多く放送された1年となった。

 すでに多くのファンを抱えている人気作品がひしめく中で、2025年に新しくアニメ化された作品の中で印象に残った作品を振り返ってみると、1話から予想外の展開を迎えるものが多かった。

 タイパ重視といわれる世の中だからこそ、1話から他とは一線を画したインパクトを持つ作品が注目され「1話切り」を回避したように思う。

 今回は、演出の工夫が目立った2025年アニメの「インパクト大の1話」を振り返ってみたい。

■ボウリング青春アニメと思いきや…

 まずは2025年7月期にアニメ化されたタツノコプロのレーベル・BAKKEN RECORDとポニーキャニオンの共同原作による『Turkey!』だ。

 タイトル通りボウリングを題材にしたアニメ(ターキーとはボウリング用語で3連続ストライクのこと)で、アニメ放送前に公開されたPVでは、女子高生5人がボウリングを通して、時にぶつかりながらも絆を深めあう青春アニメのように描かれていた。

 実際に公式サイトなどでは第1話放送までは長野県千曲市を舞台とした、ボウリング部に所属する女子高生が描かれるオリジナルアニメ作品としか紹介されていなかった。だが、第1話の残り数分というところでボウリング場に雷が落ち、主人公の麻衣が投げようとしたボールが突如光り出す。そしてエンドロールの後、目が覚めた麻衣は合戦場のさなかにいた。

 女子高校生によるボウリング部の青春ストーリーと思いきや、部員5人が戦国時代にタイムスリップするというトンデモ展開を迎えたのだ。1話の放送後まで物語の真のあらすじを隠すという、思いもよらない展開に多くの視聴者が驚いた。

 もちろん戦国時代にタイムスリップした後も彼女らはボウリングをする。結果的に、『Turkey!』はまったく新しい画期的なボウリングアニメとなった。

■壮大な物語の幕開けだった第0話の仕掛け

 続いては2025年9月期に放送されたオリジナルテレビアニメ『永久のユウグレ』。初回放送されたのは第0話「朝をこころに、一、二と数えよ」で、舞台はAIが進化した2038年。両親を失った姫神アキラが10年間思いを寄せる同居人・王真樹トワサとの関係を進展させたいと悩むラブコメ作品のように思われた。

 物語の後半ではついに「結婚してほしい」と思いを伝えて幸せの絶頂のムードとなるが、トワサが「人類アップグレード計画」のプレゼン中に銃で襲われ、それを庇ったアキラは凶弾に倒れてしまう。目を覚ましたアキラは荒廃した世界の中にいた。

 そして、翌週に放送された第1話「星の海に魂の帆をかけた女」では、アキラがコールドスリープから目を覚ました時には約200年が経過していることが明かされ、トワサにそっくりなアンドロイド・ユウグレから結婚を申し込まれるなど唐突なファンタジー展開が繰り広げられる。

 そこは「OWEL」と呼ばれる統一機構によって人々が管理される世界になっており、彼はトワサを見つけ出すための旅に出る。

 幸せからの急転落という思いもよらない冒頭の展開にもかかわらず、SF設定やAIの是非、恋愛などさまざまな要素が入り混じった同作は、物語の終盤に向けての風呂敷の畳み方が見事だった。最後まで見ると、1話が0話となっていた理由がわかるだろう。

  1. 1
  2. 2
  3. 3